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09 January 2008

謹賀新年と笑う門に来るもの

しばらく冬眠していました。レスもせずに大変申し訳ありません。実はウツだったのです。07年が暮れてゆき日が急速に短く暗くなるにつれ、海に投げこまれた石になったような気がしてきて、これは冬のせいだろかと思っていたら、石はしかし着実に深く静かに沈んでいきしまいに短い日も届かぬ海の底に着床。これは困った、これは深すぎる、石であっても地上ならば路傍で文学になるとか転がってロケンロールするとかサザレ同士で集合しイワオになるとか展開があるが、海底では手も足も出ぬ。うう室生犀星のえびの気持ちが今わかった。だいたい哺乳類は息ができん。酸素がない。酸素酸素酸素!とうんうん唸っていたところ、医者がやってきて「あんた、とりあえず石もえびも忘れて呼吸につとめろ」と一喝ドクターストップ。よって年末年始の行動は全部停止、127万気圧のもとでただぱくぱくと酸素をか細く吸収しておりました。

今ようやくヘモグロビンが動き出した気がしてきたので、じりじり浮上してきて海面に顔を出してみたら、年はとうの昔に改まっている。浦島状態で明けましておめでとうございます。新年しょっぱなから海底とか酸欠とか縁起のたいへんよい自分語りですみません。かくて明るい一年の計を計上しつつ、今年もよろしくお願いもうしあげます。

ヘモグロビン再始動に一役かってくれたのがジョンとロビン・スカイナー博士の名著Life And How To Survive It、これは新鮮な空気のように深海頭にしみとおりました。迷ったときの地図みたいな本です。しかしこっちでジョン・クリーズというといまだに「病んだコメディアン」という連想がされるときがあるようですが、ジョンの場合はどんどんセラピー世界に踏みこんでいってこんなふうに本まで書いちゃったからそのイメージが強いだけではないか。その以前にはトニー・ハンコックやスパイク・ミリガンなんかがいたし。その後も宿命のようにコメディアンは病みつづけていて、最近ではスティーブン・フライが以前から重度の躁鬱病であったことをカミングアウトして話題になりました。

わたし的には、彼が病んでいたことより、「ルネサンス・マン」とも呼ばれるインテリジェンスと才能の権化のようなフライ氏が、その事実を人に語れず伏せていたことの方に強い衝撃を受けました。もっとも彼の場合、ただ公にするのではなく、同時にみずからのヤマイを糸口にしてStephen Fry: The Secret Life of the Manic Depressiveという病める人々に関する優れたドキュメンタリーを製作、啓蒙活動につとめているあたりがやはり権化の人らしいというか。(このへんの個人的ネガティブ体験の昇華手段、というか「転んでもただでは起きなさっぷり」はジョンに似ている。) 

このドキュメンタリーでは、フライをはじめロビー・ウィリアムズ、リチャード・ドレイファス、キャリー・フィッシャー(!)などがみずからのヤマイ体験を語るのですが、スティーブンが「以前ジョン・クリーズに『きみはその人当たりの良さゆえに病んでしまうのだろう』と言われたことがある」と語っていたのが印象的でした。あと、トニー・スラッタリー(元フットライツ会長、フライと一緒に「ピーターズ・フレンズ」にも出ていた人)が強度のウツに陥り社会とのかかわりを完全に絶っていたころの話も。テムズのそばのフラットに鍵をかけて閉じこもり、ノックにも答えず電話もとらず手紙も放置、ただ絶望して部屋の家具を片端から川に投げこむという行動を続けていたところ、ある日警察のボートが川を上ってきて、拡声器で「おーい、トニー、聞こえるかートニー、聞こえたら、川にものを投げこむのをやめなさい」と呼びかけてきたんだそうです。それを受けた、フライ「じゃ、警察はきみの仕業だってことわかってたんだ」トニー「どうもそうだったようだ」というやりとりには思わず笑ってしまったのですが、しまいには心配した友人がドアを蹴破って突入、トニーを引きずるようにして病院につれていったというからすさまじい。

ジョン・クリーズの方からコメディに来た人間としては、この国のコメディとコメディアンたちとその暗黒面の歴史に興味はあるのですが、その淵はどうやらマリアナ海溝よりも深そうで、深海頭がまた酸欠になります。誰か研究してくれないだろうか。とりあえず、新年早々から暗黒とか書いていてどうも縁起がいいったらりありゃしませんが、冬眠により中断していた話は次回から再開します。すみません。

それから来週14日から3週間市川の実家に帰省します。お時間おありの方乞う御連絡。酸欠頭とあそんでやってください。

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