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29 October 2007

お客様は神様なんかじゃない

先日触れたように街に引越しました。
しかしこの「引越した」というひとことの中には大いなるドラマが詰まっています。たとえば前回にはこういうドラマがありました。

このたび引越すにあたり、引越しそのものよりも、またこのような不毛な戦いのドラマをBTとくり広げねばならぬのかと、そっちの方が余程気がかりでした。だから引越し後また問題があった場合に苦情電話をかける準備を整えておこうと思い、事前に新居周辺をリサーチしたりしました。その結果、最寄の公衆電話には街中まで20分ほど歩かねばならないとわかり目の前が暗くなりました。

ところが今回BTに関する問題はまるでありませんでした。引っ越したら電話線が生きていて、ブロードバンドも問題なくすっとつながり、さらにBTの方から携帯に追って「あんたのアカウントを今日これこれの住所に移して今日から使えるようにしたっすよ。問題あったら連絡おくれ」という確認テキストまで来ました。

わたくしは感動しました。これは控えめに言って奇跡だと思いました。思わず神様に感謝しました。そして偉大なBT様方面をふしおがみました。

しかし。
ちょっと待て。
よく考えたら、これってアタリマエなんじゃないのか。電話屋さんはこういうことができて普通じゃないのか。何普通でアタリマエのことにそんな必要以上に感動しているんだ自分。これではBTの思う壺ではないか。これはBTのアメとムチというか、客どもは生かさず殺さず、パンがなければケーキを食らえ、普通程度でありがたがらせとけけけけけけ。という英国帝国主義をひきずる居丈高客商売精神に毒されつつあるのではないか!

と叫んだりしたものの、
ま、でも、いいや。電話がつながって嬉しいし。ありがたややれやれ。さて環境も整ったことだしこれからは新しい街で新しい人生をあかるく生きてみることにしよう。

と思っていたわたしが間違っていました。
この国ではそうは問屋がおろさないのです。

引越してからほぼ3週間経つ今現在、入居当日に入るはずだった洗濯機と、入居1日目で故障したボイラーと、入居3日後から漏れ始めたダイドコの水道と、入居5日後に冷たくなったきりの居間の暖房という問題群がいまだに放置されています。特に洗濯機に関しては非常に不毛な長期戦になっていますが詳細は省きます。と言うか、詳細を書き始めたらおそらくイカリのあまりキーボードも砕けよボコバコボコバコドガガガガガガと超長文になってしまうからです。とりあえず、この状況は「新しいガスクッカー」スケッチの不毛さを地で行っていると述べるにとどめておきます。

天高く、かたつむり枝に這い、代金だけはカードからしっかり落とされている洗濯機はいまだ来たらず、わたしはコインランドリー生活を強いられています。BTにうっかり懐柔されかけたわたしがバカでした。

それにしても、なんでこうサービスの品質がこの国はこんなに「なっとらん」のか。どうして一昔前の客商売感覚にとどまったままで平気なのか。何故、向上とか、開発とか、カイゼンとか、小倉昌男の爪の垢を煎じて飲むとかそういうことをかれらは行わないのか。そして客の方ももちろん戦い不服は抱きつつも「そういうもんだ」と了解してしまうのか。

もっともそれでもひとつありがたく思うことは。
この歴史に裏打ちされたサービス業の品質の低さがあるからこそ、この国には「店員対客」という非常に面白いコメディのカテゴリが成立している、それが伝統としてめんめんと受け継がれているということです。

たとえばこのリストの上位にあるだけでも、「オウム」はもちろん、リーグ・オブ・ジェントルメンの「タブス&エドワーズ」、トゥー・ロニーズの「4本のロウソク」、ヴィクトリア・ウッドの「スープ2皿」が入っています。新旧の「店員対客」スケッチだけで改めて50本くらい選べちゃうのではなかろうか。

(もしそうならば、ヒュー・ローリーの客が店員のスティーブン・フライに「すみません、コンドームを8箱下さい!!あとジェイソン・ドノヴァンの新しいレコードも」と頼むやつを入れてほしい。→ 「ジェイソン・ドノヴァン?(にやり)」というフライがすてきだ。フライ&ローリー最高!)

こういうことどもを考えていると、この国のサービス産業に関する不毛な戦いに巻きこまれ続けるということは、面白いコメディの伝統を守るという公共の福祉のために支払う税金というか、伝統の恩恵にあずかる者はそのかわり身を挺して戦うべし、という徴兵制度みたいなものじゃないかという気すらしてきます。伝統の存続という旗印がある以上、人が不毛さのもとで耐久生活を送るのも仕方がないのです。うっかり日本的開発カイゼンお客様は神様です精神を輸入し、サービス業品質が向上したとします。その結果人は目先の便利さに預かれるのかもしれませんが、その一方で、ある伝統的コメディのカテゴリがゆっくりと絶滅に向かうことになります。

だからわたしたちには今、みずからに問い直してみるときが来ているのかもしれません。わたしたちは、伝統を守るということの本当の意味、そして「本当の豊かさとは何か」を改めて考え直さねばならないのかもしれません。


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とでも思わなきゃやってらんない、ってのが正直なとこなんで。いや本当の豊かさも大切だ、大切だが、わたしは洗濯機と暖房が欲しいんだ。ちくそう。

ブログの本題からそれっぱなしですみません。「すみません」とか謝っておきながらそういう話をさんざん書いていることに関してはあまり深く追求しないでおいてくださるとまことにありがたいです。とりあえずえーと、10月27日はジョンさん68回目のお誕生日でした。おめでとうございましたジョン翁!!めでたいのでいつものように「ワンダ」を鑑賞していました。わたしはたぶんこのときのジョンが世界で一番好きです。ジョンさんにおかれましては、「パイソンの金の亡者の方」ことエリックと一緒に、是非とも西暦3000年まで達者でいてほしいものです。


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追記
以前CH4 の「TVキャラクターベスト100」で「ジェントルメン」のスティーヴ・ペンバートンいわく(それにしてもCH4は「べスト○○100」という番組が本当に好きだ)、タブスは「現代版のペッパーポット」だそうで、「テリー・ジョーンズに盗作だってんで訴えられてもおかしくなかった」よし。
ベスト100の結果はこちらです。渾然としているリストですが、とりあえずフォルティ氏が上位なのはめでたい。ホーマー・シンプソンに負けているってのはどうかと思いますが。

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20 October 2007

マイケル東欧へ:番外のさらにその2

やぼ事情により引越しをしていました。4年間住んだ平和な村を後にして、スタンフォードという中部の小さな街の片隅に住まう街っ子になりました。とはいえそれほど長距離の移動ではなく、村から街までは約2マイル半、今まで村住まい時代も買物とか銀行とか夜遊びとかで街には来ていました。でもやはり住むと視線が変わり、いろいろなことが見えてきます。

まずこのウィキ頁写真のとおり、街といってもわーきゃーかまびすしいところではぜんぜんありません。ここは発生以来数世紀を経てなおほぼ原型のまま英国的根性で踏みとどまっている街で、一番古い建物は十字軍騎士たちが泊まっていたという旅籠です。しかもその旅籠は今でも立派に営業しているという。ちなみにここGeorges Hotelです。わりと美しげですが、実際に見ると屋根が傾いたり床がゆがんだりしていて大変そうです。

その他も石造りの街全体が、よく言って数百年の歴史を抱き情緒あふれている、あるいは普通に言って古びている、というか率直に言って強烈にぼろです。もっともこの国の場合こういうぼろさを尊び、壊れを直しほころびをつくろい辛抱強く修繕しつつ保たせてなんぼ、という価値観が支配しているので、一応ここは英国の中でもその価値観的に感じのいい街として存在しているようです。映画「高慢と偏見」(キーラ・ナイトリー版)やかの「ダ・ヴィンチ・コード」の一部がここ在住のとある貴族さんのお屋敷を借りて撮影されたよし。

そして実はわたくしもなんだかだ言ってこの情緒含みつつ強烈にぼろい街がたいへん好きになっちゃっているのであって、たとえば前述ウィキ頁の写真のような全体風景もそうなんですが、こういう感じで街のそこかしこにひみつめいた小道があって

奥には不意にかわいらしいアンティークアクセサリ屋さんとか個人経営洋服屋さんとかうまいものが並ぶデリとか感じのいいパブとかがあったりする。これは大変女子ゴコロを刺激される風景です。でもこういう小道を見るにつけ、これって火事のとき大丈夫なんかなあとか心配してしまうのですが、そういうこまかいことを気にするのはどうやらポンニチ人だけのようです。

そのいっぽう残念といえば残念なのが、以前の村は平和なラトランド州に属していましたが、今の街は境を越えてリンカーン州にあるという点です。なにしろラトランドは平和に小さすぎるので、動くとすぐに外に出てしまうのです。「ラトランド住まい」という点でいろいろな人にお笑いいただきましたが、その肩書きも過去のものとなりました。

で、
前エントリから空いていた間にいろいろあり、BBCのマイケルは南欧/新欧/中央欧をあらかた踏破してロシアまで歩を進めちゃったりしていて話題はたまってしまっているのですが、とりあえず9月26日にロンドン大教育学部講義室で行われた講演会後のマイケル写真です。

どうやらマイケルはヒマラヤ以来の目が悪いようで、今回もまたここまでたどりつくまでに、マイケル事務所および主催者ブラックウェル出版の中のひとびとから「マイケルに向けてフラッシュを炊かないでください。炊いちゃいけません。というか絶対に禁止しますんでそこんとこよろしく」と、礼儀正しく笑顔でしかしとてもシリアスな警告を何度も受けました。その後薄暗い中で遭遇したこのポンニチ女にも、多忙ななかちょっと静止してカメラ目線をくれるマイケルさんは相変わらずたいへんいい人です。というかなんかこう、すてきさが発散するような一番感じのいい種類の英人初老紳士さんでした。講演の詳細はまた改めてあげます。

Michael260907_2_choc今回も長蛇行列だったので、ブラックウェルの中の人に配給された非常食チョコ。前回についてはこちらご参照ください。→

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