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28 April 2007

めざせ世界一のココナツ・オーケストラ

今日のエントリ2本目です。画像はクリックで拡大します。

4月14日でもちと触れた、このココナツまつりに参加すべく4月23日月曜日にロンドンに行きました。



いやー、
面白かった。面白かった!これは面白かったよ!!たいしたものだったよ!!


要するに、トラファルガー広場はネルソン提督銅像のもとにパイソンを好いているひまじ、もとい、スキモノ、もとい、パイソン老若善男善女善オタクよ一堂に会せよそしてココナツを手にしともに「オールウェイズ」を歌おうじゃないか、そして「ココナツ・オーケストラ人数世界一記録」を更新しようではないかという試みだったのです。ちなみに現在の記録はニューヨークのスパマロット上演劇場シューバート・シアター前での1789人です。つまり、もともとスパマロットの中の人たちが企画してニューヨーク記録をつくった。そしてみずからそれを破らんと、ロンドンでも同じことをやる。という、よく考えると意味がよくわからない自転車操業のような催しです。だから深く考えるのは(特に「ココナツ・オーケストラって一体何なのよ」とかは)よしにしてとにかく現場に行くのです。

オーケストラ要員としてカウントされ世界記録として正式に認定されるために、参加者は同日午後5時半から現地に出向いて姓名を登録することになっています。だから4時ごろピカディリーからトラファルガー広場をさしてとことこ歩いていると、通りかかったレスター・スクエアがなにやら騒然としている。





なるほどどうやら今晩ここでスパイダーマン3のプレミアがあるらしい。あと数時間先であろうに、すでに警察出張りの柵設置されの赤絨毯敷かれのTV中継車右往左往のそしてウンカのような野次馬むらがりの、準備段階から大騒ぎになっていました。わたくしは通常この手のプレミア大好きミーハーなのですが、本日に限り一瞥もくれずに通過いたしました。ちょっと「トーマス・ヘイデン・チャーチ来るのかなあ」と考えたりはしましたが。


さてその蜘蛛男騒ぎを後にして、かのトラファルガー広場をめざすと。
そこには。




ばばーん。

風船です。しかも写真でおわかりでしょうか、これ超でかいです。




ナショナル・ギャラリー側からもう1枚、トラファルガー広場のハトたちと足。今日はわりと風があり、ときどき足があおられたりして、すると根元の地面では警備の人が「ああああああ」とか言いながら紐を押さえていたりする。

わたしはこれだけでヤラレてしまい「あはははははははは」と笑っていましたが、ふと気づくとこういう看板が。

つまり聖ジョージの日をコトホギつつ、ロンドン市とブリティッシュ・フィルム・インスティチュート協賛のもと昼すぎから一日中広場特設大スクリーンで古典コメディを上映していたようです。で、古典のトリは当然のようにパイソンまつりであるわけです。スパマロット絵がかわいい。




パイソン好きのものどもよネルソン提督のもとの大スクリーンのもとに集え。これは5時ごろの様子。新旧のコメディGoodness Gracious Meや Hancock's Half-Hourなどが流れていて、ナショナル・ギャラリー前の大階段に座って笑いながら見ている人多し。


そのうちすっごく遠くからでもとても目立つスパマロットブルーのTシャツ着用のフレンドリーな若人たちが「今日こういうのやるんで参加してねー」とチラシを配り始めました。

若人たちの中でも特に笑顔のかわいらしいおにいちゃんからもらったチラシ。上はここに来る前に寄ったオックスフォード・サーカスのBBCショップの袋。ご参考までにBBCはショップを4月末に閉めてしまうようで、最後のナゲウリバーゲンをやっていました。店はほぼ空になっていましたが、フル・サークルの朗読CDが一箱残っていたので激安5ポンドで即購入。ところで、このチラシをくれた笑顔のかわいらしいおにいちゃんは実はすごい人だったことがのちほどわかります。



5時半になり登録開始。このような机が広場の四隅にすえられて、人が三々五々集まってきています。後ろのスクリーンにはOnly Fools and Horsesのデイヴィッド・ジェイソンが映っています。ちなみに画像左上奥にのびている道が、37年前にスーツ姿のジョンがバカ歩きで出勤していたホワイトホールです。





ここで名前を書くと、



スパマ特製ココナツがもらえます。この写真を撮りながら、「あたしもうひとつ持ってるもーん。いやふたつだ。3つです、陛下!」とつぶやいてあそびました。(シューバートシアターとパレスシアターとドゥーン城で買った。)


気がつくと広場内には、ホリグレ/スパマロットの中の人たちが出現していました。



この人たちは今日のイベント要員で、チラシを配ったり人を整理したりしてちゃんと働いています。が、衣装だけではなくメイクもきちんとしている上に、なんだか妙にパイソンのツボを心得ている。この魔女さんは、四方八方から”Burn her!” ”Burn her!” “Turn me into a newt!” と突っこまれていましたが、そのたびに負けずに「あたし魔女じゃないもん!この鼻だって本物じゃないもん!」とやり返していました。




別の場所で聞こえてきた会話。

チラシを配るこの黒騎士氏「なんぴとたりともこれに参加しないことは通さん」
チラシを受け取った一般の人「わはははは。ところでその腕よくできてるねえ」
黒「何?腕?なんのことだ」
人「え、だからその左腕が」
黒「ああこれか。こんなもんはかすり傷だ!」

この無政府主義の農民氏「もしもしチラシはいらんかね」
話しかけられた一般の人「それじゃ4枚おくれ」
農「… えー、4枚って、何枚だったっけ」
人「4枚だよ4枚」
農「3の次の?」
人「そう」
農「5の前の?」
人「そうそう」
農「2?」
人「4」
農「あ゛ー…」
人「4」

やがてココナツを手にする人がだんだん増えてきて、広場にはぱかぱか音が高らかに響いています。



待つ間BFI提供の無声コメディが上映されているところ。画面に馬とかラクダとか動物が出てきたら皆一斉にぱかぱかやる。(そして互いに「ラクダじゃんあれ」「いいんだよ別に」とツッコミあう)

参加者の中にはコスプレびとたちも多くいましたが、個人的に一番好きだった服による主張はこれ。手書きだ。お嬢さんやるー。



親子連れもいっぱいいます。英国ではこのようないたいけな女の子たちにも、親の趣味によりパイソン文化はなかば強制的に継承されていくわけです。




だんだん人の密度が高まり、人々はくりあわせて座り、そして思い思いに飲み食いしたりぱかぱかやったり電話で「ちょっとあんた!早く来なさいよ!場所なくなっちゃうわよ!あたしはスクリーンの正面から20ヤードくらいのとこに座ってるから!」としゃべったりしています。わたしも地べたに座りこみ、ああすてきだパイソンびよりだと考えながら、トラファルガー広場が楽しくてよかったと思いました。というのは、何年か前のまさにちょうどこの日のあたり、わたしはここでたいへんおっかない目にあったことがあるのです。→ (バックナンバー2006年4月25日、まき名義)

あの後トラ広場トラウマになり、しばらくの間上ロンしてもここには近づくことができませんでした。それが今は、数年前に自分がボコられそうになったまさにその場で、「わーい」とか言いつつパイソン気分で楽しく座っている。まったく人生はときどきすごいどんでん返しをしてくれます。

やがて時間がたち、総合司会の人がスクリーン前のステージにあがりました。「レイディーズ・アンド・ジェントルメン!ようこそこの素晴らしいココナツ・ナンセンスへ!この聖ジョージの日というとてもイングランド的な日をイングランドの文化的すばらしいナンセンスユーモアで祝おうではないですか!そして世界記録を打ちたてようではないですか!相手はニューヨークです!ニューヨークの記録は2000人とかなんとかですが、そんなもんがなんぼのもんだー!」

一同「イエーイ!」ぱかぱかぱかぱか。

「今日は素晴らしいゲストをお迎えしております!このイベントに深くかかわりをお持ちの方です!この人なしには今日はありえませんでした!ご紹介します、その方は…」

一同「おっ」「おっ」

「…ロンドン市長ミスター・ケン・リビングストン!」

一同「わー!」「げー!」「ブー!」「ひっこめー!」


「ロンドン渋滞税を導入した(そしてさっさと値上げした)男」としてとみにロンドン子たちに評判の悪いケンさんは、それでもポピュラー・カルチャー的アイコンとしてのパイソンとそれを受けつぐハードとしてのロンドンがどうとかしゃべっていましたが、しかしさんざブーブー野次られていてほとんど聞こえませんでした。ここはこのように政治家と有権者の風通しが非常によい国です。

「ありがとうございましたミスター・リビングストン!(ブー!)そしてさらにゲストは続きます!この人々こそ、今日のイベントに深く貢献していると言えます!私も今日お会いできて嬉しい!!皆様どうかお迎えください、その方々とは、ミスター・テリー・ジョーンズ、ミスター・テリー・ギリアム!!」

一同「うわー!」「うおー!」「どえー!!」



「たぶん誰かは来るだろうな、地元だし。テリJはかなりの確率で」と実はにらんでいました。しかし正直言って、テリJはともかくGが来るとはかなり意表をつかれました。というのは、G巨匠は確かこの前日あたりまで、アムステルダムのフィルムフェスティバルに参加してトークイベントなどをやっていたはずなのです。いや、それを知ったのはちょっと前のことなのですが、アムスだし、週末だし、テリG巨匠だし、いっそおっかけて行っちゃおうかなとかなり真剣に考えていたのです。行かなくてよかったのです。地元万歳です。


テリG「あははすごい人だなあ、ところでさああそこに足風船浮いてるけど、あのパイソンの印である足ってブロンジーノの絵の人物からとったんだよね、その絵ってあの向こうにあるナショナル・ギャラリーにあるんだよね」
後ろに並んでいるのはパレス・シアターロンドンスパマロットの俳優のみなさん。


テリG「おれもロンドン舞台見たけれど、いやーパッツィの役者が素晴らしいのなんの、えーと君だよね?ちょっとこっち来てくれ」

元祖にほめられて「きゃー」という感じで嬉しそうに出てきたパッツィ役者さん。
よく見ると、
あっこの人は、
さっきわたしにチラシをくれた笑顔のかわいらしいおにいちゃんじゃありませんかっ。
えー!
舞台では元祖をしのぐほどの凶悪怪獣ヅラに見えたのに、素ではこんなにかわいらしいなんて。役者さんってすごい。
つまりあれです。夕方からチラシを配ったり登録所でココナツを配っていたりしたスパマブルーTシャツの人々は、みな舞台出演者のみなさんだったわけです。
ちなみに、その後の「オールウェイズ」のリハーサルでは、パレス・シアターで実際に指揮をしているマイケル・イングランド氏が指導してくれましたが

この方もまた、このホワイト・タイ姿で、登録場所で登録者にココナツを配ったり、それが足りなくなったらどこからかココナツの詰まったダンボール箱を抱えてきて品出しをしたり空き箱を捨てに行ったりしていました。役者と関係者みずから路上で宣伝活動とは、あなたたちは劇団つきかげですか。しかもこの日も8時から舞台があったはずなのにはたして間に合ったのだろうか。

ここでテリ二人組が一度退場し、司会の人「それでは今度はミスター・マイケル・ペイリンに、正しいココナツ取扱い方法をご説明頂きましょう!」

一同「うおー!」

となったのですが、

マイケルは画面での出演でした。でも皆大喜びしていて、例の「合わせる、離す、合わせる、離す。」のところでは皆ちゃんとそれに従いカコカコやっていました。

ふり返ると、トラ広場みちみちの老若善男善女善オタクたち。広場をはみだし階段をのぼりナショナル・ギャラリー前まで人が詰まっている。そして全員ココナツ片手に楽しそうである。いい。





その後、ホワイト指揮者の指導のもと、広場に集った全ココナツ・オーケストラ演奏者による「オールウェイズ」リハーサルです。

リハーサルの司会担当だったパッツィおにいちゃん。かわいらしい。



お手本を見せてくれる湖の淑女の女優さん。この人も舞台では凶悪なのに素だとかわいらしい。




リハーサルにふたたび登場したJとG。ちょっとわかりにくいですが、それぞれココナツの片方の殻を持っている。

J「こうして誰かと共同でやってみると、相手が本当に気が合っているのか、本当に気を許しあっているのかどうかがわかるのです」
G「ちょっと待てよなんだよできねーよ」
J「いや違うだからそうじゃなくて」
G「だめだよおれたちうまくいかねーよ」


G「パッツィはこうやるんだよこう」
淑女さん「こうですか?」



やがて登場したこの方は、ギネスブック編集部の公式記録認定人とかそういう立場にいらっしゃるよし。

「現在の記録が1789人でして、おそらくこの人数なら勝てると思います、いや『勝てる』というのは、一応公平を期す立場ではありますがわたくしはスコットランド人で相手はニューヨークですしまあそういうことであははは」



やがてリハーサルもとどこおりなく終了、
パッツィおにいちゃん「さあそれでは楽しくやって世界記録をたたきだそう!」
一同「うおー!」

流れたのはオリジナルではなくスパマロットバージョン(の間奏をさらに編集した)「オールウェイズ」。
♪Always look on the bright side of life、の口笛のところでココナツをかこ、かこ、かこっかこっかこっ♪と叩く。皆歌う歌う。舞台の上のテリー組も役者さんたちも叩く叩く。これは楽しい。とても楽しい。物凄くたのしい。


そして舞台の上下ともわあわあかこかこと盛り上がり終了後、総合司会の人がふたたび舞台に登場しました。
「素晴らしい!素晴らしい!なんて光景だ!!そして皆さん、お待たせしました、結果を発表します!とは言え実はまだ数えている最中でしてこれから若干増える可能性が(ごにょごにょ)、それはともかく、発表します!本日ココナツ・オーケストラの公式な記録は、なんとびっくり、4382人!!
一同「わー!」「イエー!」「きゃー!」全員かこかこかこかこかこかこ。



ところで後でスパマロットHPを見たところ、その人数はかなり増えていて、最終的には5567人になっていましたHPのSPAMALOT Smashes Coconut Orchestra Record!のとこ)ギネス申請記録だというのに1200人以上の誤差があっていいのかと思いますがまあ自転車操業だしパイソンだしGとJだし楽しかったしいいや。
おそらく登録してココナツだけもらって立ち去った人々も大勢いるのでしょう。しかしそれにしても、この広場を埋めつくすパイソン好きの人の波はやはり普通ではないと思います。HPにあがっている群集の写真がすごい。

そしてその後、われわれは春の夕暮れのトラファルガー広場に座りこみ、ホリグレを見たのです。

トラファルガー広場はロンドンのど真ん中にあり、まわりは相当な交通量で車はゴウゴウ走っています。しかし今晩はその中におかれながら、われわれはしばらくの間、ツバメとか死体集めだよー!とか燃やせー!とかアヒル!とかキャメロット!キャメロット!キャメロット!ただの模型じゃん。(しっ!)とかニッ!とかシュラベリ!とか1、2、5!とか青!いや黄色!とか大声で叫んだりカコカコやったりしながら、まわりの現実から切り離されてしばしパイソンたちと遊んでいました。


映画を一番大騒ぎしながら見ていた一般コスプレイヤーの方々。台詞は叫ぶわ歌は歌うわ踊りはおどるわとものすごく楽しそうでした。

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Comments

akko様。
なんというか、もう、言葉もありません。
なんて素晴らしいイベントでしょう。思わず言葉も翻訳口調です。
レポに感謝、感謝です。

Posted by: josan | 28 April 2007 at 19:07

同じく、言葉もなく感激、感涙であります。素ん晴らしい。
いいなあああああああ、akkoさん!!!

Posted by: kick | 29 April 2007 at 13:35

これはやはり日本ではありえない数時間です。現在「スパマロット」として英語圏でリバイバルしている現象を30年前に文字通り地を這うようにして作った、若かりしころは突出する自我のカタマリであったJとGという男たちが、今そこにロンドンの同時代で生きていて、でも初老にさしかかり丸くなっている(外見も内面も)、しかし人々は彼らを発見し続けていて、そしてトラ広場に集合している、そして自分たちを発見して集合した物凄い数の老若男女たちを目の前にして、本人たちが「ひゃあこれはすごい」と驚いている、その姿を目にしたときに、この場にパイソ愛に満ちたわが同胞たちがいあわせればどんなにすてきだろうとどんなに思ったことか。その感じがちとでも伝わらんことを。

Posted by: akko | 01 May 2007 at 12:12

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