« 19SEP : あの馬鹿はドゥーン城をめざす (その2) | Main | 29SEP : マイケル・テリJ・ジョンの本のこと »

26 September 2006

26SEP : BBCは謝罪し責任者を解雇するか?

本日はちょっと直接にはパイソン関係ではない、しかも日本ではよう知られていないことの話をします。でも本日だけなのでどうぞなにとぞご容赦ください。

この頁にときどき名前が出てくる「トップギア」というBBCのくるま番組があります。わたしは11年もの地球5週目のボコ錆ゴルフに乗っている車無頓着人間のくせに実はこの番組がとっても好きで、シリーズが始まるたびにわーいと喜び、毎週放映を待ち構えるようにして見ていました。そういう人はけっこう多いようで、これはBBCの看板のひとつであり、海外にもどんどん輸出されているそうです。

この番組の何が面白いって、車をねたにとことん遊んでしまおうというその態度、および司会3人組のキャラクターがすばらしい。その3人組とはジェレミー・クラークソン(一番年上で背が高い。口が悪い。仕切る)、ジェームズ・メイ(クールな長髪、保守派、中肉中背)、リチャード・ハモンド(ちっちゃいので「ハムスター」と呼ばれている。でもスピード狂。左ハンドルのポルシェ911を持っていることをあとのふたりにばらされ「かっちょわりー」とネタにされた)の3人です。かれらは互いに名字で呼び合い、くるま好きの子供がそのままオトナになったよ、今は好きな車に乗って好きなことをどんどんできるのが嬉しいなー!というノリで、シリアスな車レビューを聴かせてくれるとともに(もっとも、レビューも「今度のアストンマーチンナントカはこんなにスゴいのにたったの15万ポンドだ!」とかどうも参考にならないものばかりですが)、さまざまな思いつきによるくるま実験を、どんなにバカバカしくともみんなで大真面目にやりぬいてくれるのです。

さて、
先週の木曜日、トップギア新シリーズの撮影中にリチャード・ハモンドが事故を起こし病院にヘリで運ばれ、脳挫傷で死ぬかもしれないという状態に陥りました。それもただのくるま事故ではなく、非公認ながらジェットエンジン搭載車で時速300マイル(時速500kmくらい)の英国地上スピード記録に挑戦しようとしていた最中のことでした。BBCの現役看板の人気者がその番組のために死にかけている、しかもえらく無謀なことをしていたらしいから、という驚きもあり、このニュースはかなりのインパクトをもたらしました。

えと実はわたくし今はこうして冷静に書いていますが、実はトップギアの司会者群の中では、新しいアストンマーチンなんかに乗ったときには「うひゃほーい!サイコウー!」とうれしそうに叫んだりするいちばん明るいハムスター君が大好きでして、だからその第一報を仕事場のスカイニュースで初めて目にしたときにはどえらく動揺しました。その後、カバーがかけられたジェット車の残骸がぽつりと残る事故現場の様子が空撮されプレスに流れました。それを見ながら、あの中であのハム君がと考えたとき、かなり具体的にぐらりと来ました。それはダイアナさんのときよりもリアルなぐらりでした。それ以来ちとわたしはポンコツと化し、しばらくスカイやBBC24にはりついてその続報を追う以外の機能をやや失っておりました。

幸いハム君は最悪の状態は脱し、次第に意識も回復し、ときどき「オレはいったいどうなったんだ?」と口にして、かたわらに詰めているジェレミーに「バカヤロウ、事故ったんだよ、このヘボ」とか泣きながらツッコまれる、という状態にまでなっているそうです。病院の人が「脳に傷がついてるのでこれからが長いよ」とは言っていましたが、もう大丈夫そうだということで、とりあえずハム君のことは次第にニュースのヘッドライナーからはずれつつあります。ま、人間の関心なんてそんなもんでしょう。

で、
ハム君はどうやら無事であるというので、焦点は今後のBBCの態度と対応に移りつつあります。
この件に関しBBCはどうしていたかと思い出すと、まず事故直後のBBCの報道はものすごく冷静でした。特にさわぐことはなく、あくまでもニュースの一環として、ある芸能人が番組の撮影中に事故を起こして重態なのである、という報道的第三者立場をつらぬいていました。そのヘッドラインも、「TVプレゼンター、事故で重態」であり、そこには「トップギア」や「ハモンド」という固有名はなく、なんかこう、必要以上に距離を置こうとしている印象でした。

もっとも当然のように「そもそも事故はなぜ起こったのか。テクニカルな面の安全管理に問題があったのか。それとも、本来なら空軍レベルの訓練を受けた人が乗るべきジェット車に、車番組のプレゼンターで確かに非常に運転がうまい、というかかわいい顔して実はハンドルを握らせるとスピード基地外になることで有名な人であるとはいえ、ハム君を乗せてみようというBBCの判断が間違っていたのか。それとももっと他の予測できない何かか」という議論が起こりました。

それに対してBBCは公式見解として、「BBCと警察との調査が終了するまでそういった詳細の発表は控える。しかしハモンド氏およびそのご家族の立場は心から理解し、かれらのためには最大限の協力を惜しまない」と宣言しています。

しかしこの見解をよく読むと、BBCはこの事故に関しては決して非を認めたり謝ったりしてはいないのです。というか、BBCとジェレミー・クラークソンを含むトップギアの中の人々は、「BBCあるいはトップギアの番組方針は間違っていない、何故ならこれはこういう番組だからだ、ゆえに300マイル時の車にハムを乗せようという判断も正しかったのだ」と強弁しています。おそらくハム君本人ももう少し正気に戻ったら、きっと似たようなことを言うだろうという気がします。

ふと、かつて、BBCが引き起こした醜聞であったにもかかわらず、その報道に関しては完璧に第三者的態度を貫いていて、必要なときはBBC自身がBBCの態度を容赦なく批判していた、ハットン・レポート事件をちょっと思い出しました。

結局あのときは会長のグレッグ・ダイクが引責辞職したわけですが、それでも辞めぎわに「自分はBBCの最高責任者だからこの件の責任を取って辞めるのである、それからこの事件に直接関わった者もしかりである。しかし別の部署にいてこの件に関与していないBBC職員たちにはまったく罪はなく、彼らは糾弾されてはならないのだ!」と断言していました。あのときには「ああこのヒトビトはNHKとは違うのだ」としみじみ感じました。

仮に(あくまでも仮に、ですが)今後の警察の調査で「この事故はBBCに責任がある」とはっきりしたとします。そうなればかれらはまた違う態度になるのかもしれません。が、それでもやはり、ハットンレポートの伝で、「責任がある人間以外には責任はない」という姿勢を貫き、その一方で第三者的にきびしい批判をするのでしょう。

えー、BBC、凄い。その態度に賛成共感するかどうかは別として、とにかくスゴイその態度。というか、そのスゴイもんを存在させているこの社会がスゴイ。ここはとにかくこういうふうにできているのだ。と思いました。

とりあえず、ハム君元気になってくれ。たのむから、あの明るいハム君が死んだりするかもしれないと思わせないでくれ。たのんだよ。もうあんなんはたくさんだよ。

というわけで当頁も回復し、次回からは通常営業です。おさわがせしました。

|

« 19SEP : あの馬鹿はドゥーン城をめざす (その2) | Main | 29SEP : マイケル・テリJ・ジョンの本のこと »

Comments

akko様、はじめまして。いつも読ませて頂いております。
私も彼が病院移動中に自分の足で数歩歩いている姿を見て、かなりほっとしました。
事故の起こった企画がとてもトップギア的だったことも、この後番組はどうなっていくのかと心配だったので、akkoさんのこのエントリが読めて嬉しかったです。ありがとうございました。これからも本題もそうでない話題も楽しみにしております。

Posted by: ta | 01 October 2006 at 02:46

★taさん
いらっしゃいませ。そして在英の方とお見受けしました。ラットランド地方はもう寒くてヒーターを入れていますが、そちらはいかがですか。

病院移動光景には、わたしもほっとしつつ泣きそうになりました。生きてますねハム君。よく時速500キロでこけて生きているもんですね、あんなにちっちゃいのに。もっとも、病院の中の人たちが「身体的には急速に回復してるけど、脳関係にはこれからちょっと時間がかかるかもしれないよ」と慎重に言葉を選びつつ発表しているのを小耳にはさみ、これは意外とほっとしてばかりはいられないのかもしれないという気がしています。

トップギア新シリーズは無期延期っぽいですね。事故の翌日、動揺しつつとりあえず元気なハム君の姿を見たいと思い、いつもエンドレスにトップギアの再放送を流しているスカイのUKゴールドかなんかをつけたら、画面の番組名表示は「トップギア」なのに、実際映っているのは古いトップ・オブ・ザ・ポップスだったのがけっこうショックでした。再放送もだめなのか。それはハム君本人としてはどうなのか。これは想像なんですが、かれ自身は決して新旧とも自粛なんかされたくないんじゃないかと思いますがどうなのでしょう。

Posted by: akko | 01 October 2006 at 20:58

akko様、コメントありがとうございました。

私は残念ながら只今日本にいるもので、BBCもトップギアもかろうじてところどころ見ることは出来ますが、細かい続報は得がたいです。
brain injuryというのは私も不安に思っていました。
いくら犬が愛らしくても彼の代わりは勤まりませんよね。
あんなにいつもやっていた番組が再放送すらされていないのも悲しいですね。

私は主に在ロンでしたが、ニューカッスルなどという地に住んだこともあり、そこに住む者からは8月にヒーターを入れたという報告を受けました。
ラットランドも大変気になる土地です。お体に気をつけて。

Posted by: ta | 02 October 2006 at 16:06

日本でしたか、それは失礼致しました。BBCにはどの程度アクセスがおありなのでしょう。病院がブリストルに移ってから特に大きなハムニュースはなく、これから回復をめざすばかりという感触です。
あの大中小3人組がそろって現れる日が早く来ることをいのりつつ、自分用おぼえがき&ご参照を。


「ハムが歩いた!」ニュース@BBCです。タイトルに深く賛同。
http://www.youtube.com/watch?v=G2wO7pCN-1s


トップギアをご存知ない方にもおすすめ。
好きなトップギアその1 「トヨタアイゴサッカー」。
このときのハム(黄色い方。青はジェームズ・メイ)は実に楽しそうでした。
http://www.youtube.com/watch?v=hq9wocBxFa0


好きなトップギアその2、
「何故オープントップのヴァンがないのか?ないならふつうのヴァンの上切って自分たちで作っちゃおうじゃないか?そしてそれにはもちろんちゃんと収納可能な屋根もついているべきじゃないか?ならばその屋根も自分たちで作っちゃって、そしてそれがちゃんと機能するってことを見せたろうじゃないか?」
http://www.youtube.com/watch?v=_jsAH7kLBu0
トップギア精神がみちみちに詰まった企画でした。この前の部分、ガレージにこもって大騒ぎしながら切ったり溶接したりしてこのオープントップヴァンを作っているの3人も面白かったのですが、やはりクライマックスはここでしょうか。最後火を吹くヴァンから「ひえー」と逃げ出す3人がすてきです。


好きなトップギアその3 「最速のバカ車」。
http://www.youtube.com/watch?v=b7U6UPLrNdQ
何も言わない、とにかく見てください。全部ナンバーと道路税支払済ステッカーがついているということは、ちゃんと登録されているんですねみんな。すばらしい。
ちなみに黄色いのは、粗大ゴミ用のゴミ箱です。


それからわたくしかつてニューカッスル在住でした。あそこは確かに8月でも寒いところですが、しかし地元びとたちは、そのつめたい強風がふきすさぶ中、サウス・シールズ(エリックの出身地)の極寒北海でたのしそうに泳いでますね。すごいもんです。

Posted by: akko | 05 October 2006 at 05:30

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 19SEP : あの馬鹿はドゥーン城をめざす (その2) | Main | 29SEP : マイケル・テリJ・ジョンの本のこと »