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04 February 2006

04FEB : 世界で一番なジョーク

先日はヒース・レジャーがすてきなあまり、本来の本題から若干それてふつうに映画の話をしてしまいました。
ので、今日はとても関連のある映画をひとつ。

THE ARISTOCRATS。
昨年暮れの映画ですが、日本で公開されている形跡はありません。これからも、当分はないと思われます。
これはコメディに関する映画、というかドキュメンタリーです。しかしコメディ好きでいろいろ映画も見ておりますが、これほどの衝撃は「イディオッツ」以来です。金縛りにあいました。

どういう映画かというと。
現役コメディアンたちの間で都市伝説のように語りつがれている、とても電波に乗せることはできない、「世界で一番過激なジョーク」というものが存在する、それはコメディアンたちにより各自解釈しアイディアをほどこされ、より過激になっている、その自分たちのアイディアを、100人コメディアンが次々出てきて各自のバージョンで語る、というのがその内容といえば内容です。かれらは自分のバージョンが一番過激であると信じつつ、そのとんでもねえものを嬉々として語ります。

ではその「過激なジョーク」とは何か。
多くの場合、次のようなパターンです。

「あるエージェントのオフィスに父親、母親、その息子と娘、その犬という家族がひと組入ってきた。『我々を使って下さい、大受けすること間違いないです』『おかど違いだ、ファミリーもんならよそに行ってくれ』『いや、素晴らしいジョークをお目にかけます、ちょっとだけでも』『ならさっさとやってくれ、何ができるんだ?』
すると、
その家族が『では』とおもむろにいきなりなにもかも脱ぎ捨て、
それはそれはどろどろねたねたの、放禁用語ばこばこの、モザイクばしばしの、検閲ぬとぬとの、スカトロずるずるぐちゃぐちゃの、全員粘液まみれナニまみれ、当然犬も巻きこんで黄色と茶色人獣相まみえるというか、そーゆー世界を、どこどこその場で展開する。
(もちろん、それを語るコメディアンはこのぬちゃぬちゃ詳細をこと細かに描写するわけです。)
エージェント口を開いて、『あ、ああ、スバラシイ。で、それは何というジョークなんだ?』
家族そろって、
『やんごとなきご一家、でーす!』」

いや、本当の最後のセリフは「ジ・アリストクラッツ!」です。このパンチラインからこのアングラジョークのタイトルがきているわけですが、性的、あるいは家族に関する侮辱単語に関しては日本語よりもずっとタブー感が強い英語でのショックが、こうすれば少しでも伝わるかと。
こういうジョークが映画画面で大声で90分間語られ続ける衝撃。大笑いしつつ本気で吐きそうになりました。

しかしそのジョークそのものよりもショックを受けたのは、その世界一過激なジョークのことを語るとき、100人の各コメディアンのコメディに対する捨て身の覚悟というか、コメディに対する姿勢というか、たたかいの哲学のようなものがごく自然に透けて見えるのです。これはすばらしい。ああ、なんてカッコよくてカッコ悪くて高尚にして野卑なんだ、コメディアンという商売は。

で、
100人コメディアンが出てきてはいるのですが、そのほとんどがアメリカの現役スタンダップの人ゆえ、実はロビン・ウィリアムズ、ウーピー・ゴールドバーグ、クリス・ロック、ペン&テラー、キャリー・フィッシャー(!) というメジャー路線以外、よくわからない人ばかりなのです。要勉強。
しかしここに英国代表として、(1) ビリー・コノリー、(2) エディ・イザード、そして(3) エリック・アイドル、が出ています。アメリカのインディペンデントコメディ映画に出すには、すごくバランスの取れた人選だと思います。パイソンあるいはあの世代のうちでは、唯一エリックがスタンダップができる人であるようですし。

ちょっと初老のエリックは、自分の「ジ・アリストクラッツ」ジョークをやろうとして、「ごめん、すまん、ジョークは苦手なんだよね」と一度とちります。
でどうするかというと、今度はドイツ語で語りだす。
あのエリック口調のドイツ語でジョーク(たぶん)をぺらぺらぱらぱらフリつきで語ったあと、パンチラインを
「ジ・アリストクラッツ!イエイ!」(嬉しそう)
ああエリックだ。と思いました。

あと、テリGも撮影されてアリストクラッツジョークを語っていたらしいのですが、エンディングロールにわずかに「Special thanks to Terry Gilliam」とあるだけで、本編には出てきません。どうやら気の毒にもカットされたらしい。

とりあえず、ジ・アリストクラッツ。スゴすぎる。できれば英語で。ぜひ原語でこのヒドイ感じを味わってほしい。見終わったあと、わたしはしばらく、ジョークとはなにか、コメディアンとはなんなのか、と、遠い目をして考えました。

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Comments

そうですか。ご覧になりましたか。ARISTOCRATS。
私めも昨年末、NYで見ました。
すっげー、下品でガサツです。ARISTOCRATS。当世風スタンダップコメディと言えば、まあ当世風ですが。

ザッカー兄弟初期の人形劇のヤツ(プリンスの人形が「ボクが一番欲しいのは、ボウボウ生えるヒゲと背丈なんだよお〜」てなくだらない歌うたうやつ)みたいなのとか、サム・キニソンみたいなネタ、延々1時間半続けられますからねえ。
ロビン・ウイリアムスが久しぶりに本領発揮、というあたりは嬉しかったです(元々、このかたはこういう芸風なので。「Good Morning Vietnam」御参照)。

「ウエインズ・ワールド」より前のネタを知らないであろう若いアメ公連中には、結構ウケてたみたいでした。
ベルーシが「ナショナルランプーン」で演ってたりレニー・ブルースのネタの焼き直しみたいなカブリネタも結構ありましたね。
「それ、ネタばれじゃん⋯」
とスクリーンに日本語でボソボソつっこみ入れているおっさんをNYで昨年末見かけたかたは、ご一報を。それ、多分、わたくしです。

Posted by: Donald Mac | 05 February 2006 at 08:55

まさにウェインズ・ワールドよりも前のアメリカものを知らない若輩ゆえでしょうか、うっかりウケてしまいましたアリストクラッツ。
(ロビン・ウィリアムズを最初に見たのも「いまを生きる」なんかの映画でした。だから、かれの初期のスタンダップのビデオを見たときの衝撃はすごかったです。役者もいいけどどうしてこういうことを続けてくれないのだろうロビンウィリアムズ。なんか人類的にすごい損失であるような気がします)。
もともとスタンダップにはあまり明るくないところにもってきて、今のアメリカのものに関してはほとんどお手上げです。このいまだにアメリカを「こないだまで植民地だった国」と見なしているような国においては、かの地の情報はなかなか聞こえてきません。

それにしても。下品なものを面白いと思う体質では決してないのですが、それでも、いかにして他人を出し抜き蹴落として究極の過激ができるか、オレがオレがアタシこそが、というあたりに現代のコメディアンの性みたいなものを感じました。そして、そして「過激」イコール「スカトロ」とか「障害者ねた」であるあたりに、病んでるなあ現代のコメディ、とも。

エリックは楽しそうにアリストクラッツをやっていましたが、個人的には、数年前、「ジャッカス」が出現した当時その存在を非常に気にしていたジョンさんに、この映画の感想をきいてみたいところです。

Posted by: akko | 06 February 2006 at 04:50

先日、『ジ・アリストクラッツ』DVDの特典映像をぼんやり観ていたら、テリー・ギリアムがカットされた理由が分かったので、報告にまいりました。どうやら監督のポール・プロベンザさんが、ヘッドフォンの装着を怠っていて、音声のトラブルに気付かないまま撮影を終えてしまったらしいのです。特典では口パクの映像に、ポールさんがボイスオーバーで話の概要を加えていました。

インタビューは終始和やかな様子でした。冗談を言っては笑い、聞いては笑い、パイソン時代の面白エピソードを打ち明けてはまた笑う、といった感じです。時には大袈裟な身ぶり手振りも見られて、一体どんな話をしているのか気になるところですが、残念ながら内容には触れてくれません。一通りアリストクラッツの話を終えた後、映画監督としての解釈を尋ねられると、ギリアムの表情が真面目になります。

テリー・ギリアム版アリストクラッツ(オレならこう撮るバージョン)は、全面曇りガラスで囲まれた事務所が舞台です。そこにチュニジアかどっか出身の、いかにも無垢な一家がやってきて、グチョグチョを全て曇りガラスの向こう側で展開するんです。外には恐る恐る覗いてる人が居て、その人の反応や舞い交う洋服の破れ具合なんかで、間接的に中で起こってる事の壮絶さが伝わる仕組みです。

これを話している時のギリアムは、本当に楽しそうに目をキラキラさせていて、まさにドキュメンタリー『The Aristocrats』にぴったりの一幕でした。音さえちゃんととれてれば!

しかし本編に出せなかった理由が「つまらなかったから」ではなくて良かったと思いませんか。いえ、私はもちろん、ギリアムの兄貴を信じてましたから。兄貴がすべったりするはずありませんとも。ええ。

こうなるとパイソンズの残りの4人によるアリストクラッツも聴いてみたくなりますね。いつものように伏し目がちに、ぽつりぽつりとウンチの内容物について語るマイケル・ペイリンとか…ここぞとばかりにお医者さんぶって、ありもしない医学用語を駆使するグレアム・チャップマンとか…ジョン・クリーズならどんな風になるのでしょうか。若き日のあの朗々とした声なら何でも言えてしまいそうだなぁと、思うのですが。

Posted by: 青 | 20 February 2006 at 14:31

★青さま
ようこそいらっさいませ。
テリGに関するチクリ、もとい丁寧なご報告をありがとうございます。これで謎が解けました。DVDは必ず見ることにします。

テリG版アリストクラッツにはまともな目撃者がいるというのがシブイですね。他の人のアリストクラッツだと、ジョンがときどき言うところの「全員が狂っているから世界観に説明がいらない状態」なので、そのぶん手間は省けますが聞き手との関係が切れるかもしれない。そんなもんは気にしなくていい種類のジョークなのかもしれませんが。でも、その関係をより保つために目撃者を置きたがるところとか、そしてそうするとその世界の成り立ちの説明が必要になり、つまり若干話を作る必要がでてくるわけで、そういうつくりこまれる世界をふと思い浮かべるところが、やはり映画監督だなあ、と。

それにしてもテリG兄貴は、自分で撮るときだけではなく、人に撮られるときにも不幸につきまとわれる方なのですね。普通、プロの映画監督は音声を録り忘れたりはしないのに忘れられるのが不幸ですし、他の100人の出演者はちゃんと録れているのによりによってテリGだけが、というのもかなりの不幸だと思います。イングマル少年的に、「ぼくの人生はカメラを流されたり、音を録り忘れられて人の映画にも出られないあの映画監督よりもましだ」とお星様につぶやきたいくらいの不幸度です。マイ・ライフ・アズ・テリー・ギリアム。そういえば最近離婚したという噂を聞きましたが。噂というかエリックが言ってたんですが。どうなのでしょう。幸せなんでしょうかGさん。

マイケルはおとなしそうな顔をして意外とアレですから、アリストクラッツもすごいことをさらりと描写してくれちゃって、マイケラー婦女子がきゃあきゃあ言って喜びそうです。グレアムは言いますね、微に入り細に入り。医学的正確さに則って。ジョンは微妙です。下ネタがだめそうですし(わたしが知るかぎり、ジョンの下ネタは、ISIRTAで言ってた「セックスとはカエルの一種だ!」というあたりが限界です)、マイケルが描写してるわきで「きみにそういうことはあまり言ってほしくないなあ」とかぶつぶつつぶやいていそうです。グレアムとかエリックとかテリG とかテリJだったら放置してるでしょうが。だから、テリJは今度は「何でマイクは許さないのにぼくのことは許すんだ」と逆ギレすればいいと思います。

Posted by: akko | 23 February 2006 at 07:37

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