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14 December 2005

14DEC : 就職にたぶん役立つモンティ・パイソン

あんまりにものどかなあまりエリック・アイドルのネタにされたラットランドに住みつきはや幾年、いつのころからかふらーとか漂泊の思いがやまず、わたくしは最近、あかるく輝く灯火に魅かれ、新たな職を求め、都会にさまよい出て行きとことこ歩いて人に会っては頭を下げてまわっています。学生終了まぎわの就職活動時のように「あと○日以内に仕事が見つからなかったらごはんが買えずに即路上、不法滞在国外退去」というような絶望的な状況ではとりあえずないにせよ、それにしても、実らない求職活動というものはどうしてこうも人間の精神を荒廃させてくれるのでしょうか。灯火に魅かれていっては「じゅ」と焼かれている蛾、という構図が脳裏にしつこくよぎるのは何故でしょうか。

ところでこっちの履歴書は、自分の経歴を針小棒大に、もとい、雇用者にアピールする形で自分の言葉で書いていいことになっています。よって、東京支社のある会議のために営業部の書類を数枚日本語に訳した、ということを
「日本での新たなマーケットを開拓するプロジェクトに加わり、優れたバイリンガリズムを発揮して自社製品のローカライゼーションに多大なる貢献をした」
と書いてもいいのであります。
(注:これはわたしではなく、わたしの知り合いがやったことです。これはあまりにもひどいと思ったので、すぐに参考にしました。)

そして持って行く先によって、先方の業種に関連づけるためには自分の経歴のどの部分を棒大、もとい、強調するかでかなり作戦を練らねばならず、履歴書を1枚書くと疲労困憊、3日間ほど寝込みます。ようやく回復しかけたところに封書が一通ひらりとやってきて、郵便カゴの底に横たわるその妙な薄さ、中身が重要な文書ではなく、ただ一行目が「残念ながら……」で始まる、文末のサインまで印刷のたぐいの手紙だということがほとんど預言者なみの正確さで感知され、また3日間ほど寝込むわけです。

で、
ある日わたしは人に会う際、小脇に「正伝」を一冊たずさえて行きました。それが直接業種に関係するかどうかはともかく、一応夏をひとつ返上して、身が粉になるほど働いた結果のポートフォリオという視点で見てもらえればいいな、というほのかな希望を抱いてのことです。

すると、履歴書をじろじろ眺め回していた先方の比較的偉い人が

「この経歴にあるビャクヤショボーというのは何なんだ」

と問うてきました。

いえ実はこれこれこういうわけでありがたくもこういうお仕事の機会を頂きまして、で、おかげさまでこういう本ができたというわけなのでございます、と現物をさしだすと

「わ。あは。うわはははは。あははははこれはパイソンだモンティ・パイソンだ、あはは面白いおもしろい、君たちも見てるんだうはははははははは、いや読めないよ、読めないけどおもしろいこれは面白いよ、ああここに国の地図が、どはははははねえねえこれ、ここ、ここって、ウェストン・スーパー・メアって書いてあるんだよね?(「そうです。」) ぎゃははははそうだそうだなにしろジョン・クリーズはウェストン・スーパー・メア生まれだもんなあうわはははははあ」

あの地図の中からぴかりと聖地ウェストン・スーパー・メアを識別したその人に、すんでのところで握手を求めそうになるのをこらえるのにわたしはかなりの努力を要しました。そしてわれわれは、仕事のことを離れ、パイソンとかユーモアとかコメディとか文化とか英語と日本語とかいうことをしばらく話し合いました。なんでもその比較的偉い人は「フォルティ・タワーズのオーストラリア人の女の子が出てくるやつ」が好きなんだそうで、おおイイ趣味だとほとんど尊敬しました。

これはこのような状況下においてはかつてないほど異様に楽しい会話だったので、だからもう、それが求職結果にどう結びつくかはこの際別の問題です。ああ、実らんかな結果。

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Comments

 就職、決まると良いですね。そうしたら、毎日そのイイ趣味のお偉いさんとパイソン談義ができるでしょうね。
 でも、ご自身がおっしゃるように、必ずしも結果に結びつかないのが、あちらの方々ですね。
 いや、私も、コミケでパイソンの同人誌売っていたら、外人さんが通りがかりに「あ、パイソンだ!」てな感じで寄ってきて、大いに、珍しがってくれたことがありました。「ファンなんだよね」とか言いながら、最後はスパム・ソングまで歌ったのに、何にも買っていきませんでした。 まったく外人さんて・・・

Posted by: 木下(にょろにょろ)靖 | 20 December 2005 at 13:26

まことに亀レスで申し訳ありません。
出版業界に何年もいると、ときどき「一冊の本が人の人生を変えてしまう」瞬間に立ち会ってしまったりして、己の業の因果の深さを思い知るのですが、果たして結果はいかがだったでしょうか。
地球の陰から朗報をお祈りしております。

Posted by: eno7753 | 27 December 2005 at 15:35

★木下さま
亀というか、「復活の日」で南極をめざすヨシズミの如きレスで申し訳ありません。
聖地ウェストンに反応した比較的偉い人からは、「本格的な採用活動は1月から始めるから待ってろ」という返事がとりあえず来ております。これが実は英国流に遠まわしに断られているのでなければよいと思います。
英友人にちょろっと「実はわたくしこーゆーものにかかわりまして」と現物を示したところ、なにしろああいうわかりやすい表紙なものであるので、「どはははは」「うはははは」「ぎゃはははあんたって本当にあはははは」「♪オールウェイズルックオンーザ♪」と一気に場がなごみました。
ので、すかさず
「ではご家庭におひとついかがでしょうか」
と言及すると、
「いや」「その」「なにしろ日本語は」「あ携帯が鳴って」「いやあいい天気ですねえ」「あああそこに友達が。ああ友達が。おーい友達よ」と、英国流に礼儀正しく話をそらされました。まあ英人なんてのもこんなもんです。

★enoさま
変えました>正伝。どう変えているかは物凄ーく長くなるのでここでは省略いたしますが、とりあえず、やってる最中は身が粉になりましたが、その後人生がたいへん楽しくなったということだけは確実です。
無謀にも異業種への転身をはかっているゆえ、道はホイホイの上のゴキブリのごとく英国流に粘っておりますが、それでもわたくしは都会の灯火をめざしてヨシズミ並の足取りでうんしょうんしょとやっております。たとえそれが「じゅ」とか嫌なニオイを発して焼かれる末路につながろうとも。

Posted by: akko | 28 December 2005 at 10:52

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