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23 October 2005

23OCT : 正伝おぼえがきふたたび

「モンティ・パイソン正伝」のまとめ頁を、帰省する前に新しいウェブ内容としてあげようとしていました。しかしあいにくあと21時間後にはヒースローで飛行機によじ乗っておらねばならず、しかもその間に会社に1回行かねばならぬため、全部を一度にあげるのはやや難しくなって参りました。

とりあえず、最初のさわりのところだけをちゃっと下に貼っておきます。わりと似たような文を最近読んだ記憶がおありの方は、とりあえず知らないフリをしていてください。続きは実家で書いて、サーバーにつなげられれば本サイト内容としてそちらに入れて、それがだめだったらここに五月雨式に貼り続けようと思います。まるで、本番ぎりぎりまで庭で舞台装置にまみれていた学生時代のテリGのような気分です。


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(1) The Pythons Autobiography by the Pythons と「モンティ・パイソン正伝」


ほとんど1kg

「モンティ・パイソンズ・フライング・サーカス」(以下「パイソン」)は1960年代終わりのロンドンのカウンター・カルチャーの空気を色濃く反映し、「戦後のロンドンで起こったビートルズの次にクールなこと」だった(2005年3月、Time Out)。それを作った5人のイギリス人と1人のアメリカ人(以下「パイソンズ」)も、テレビというメディアも、戦後というロンドン社会も、何もかも一様に若かった時代だった。そこにあったのは、既存の笑いのフォーマットをはぎとり、キャラクターやクリシェを排除し、パターンを憎みオチを嫌悪し、言葉の意味を踏みにじりそして定義を引っくり返し、テレビというメディアをも逆手に取って、イギリスの社会と伝統的価値観に対してパイソンズが叩きつけた、コメディという形をした挑戦状のような番組だった。

英語圏においてパイソンに関連する本は新旧多数出版されているが、The Pythons Autobiography by the Pythons は比較的新しいもののひとつで、ハードカバー版は2003年12月に出版された。著者ボブ・マッケイブは「テリー・ギリアム映像大全」を含むTV・映画に関する本を多数執筆・編集しているが、これはおそらく(文字通り)最大の作品だった。6人のパイソンズが出生から数十年間のそれぞれ人生を詳細に語り下ろした膨大な量のテキストと、初出のものを含む写真を千枚以上フルカラーでつめこんだオリジナルのハードカバー版は、25cm x 32cm x 4cmと直方体をなし、重量はほぼ3kgに迫った。

しかしあまりの重量ゆえ、英国ではまずひとまわり小さい普及版ハードカバーが新たに発売された。それでも、写真が豊富すぎて文字と重なりときどきひどく読みにくい点の解決をみるために、テキスト中心のペーパーバックが2005年9月に発売された。ペーパーバックは写真は200枚強とハードカバー版のものに比べると少なくなっているが、それでも本文は500ページに迫る。

ペーパーバック版は、ハードカバー版のテキスト部分と写真の抜粋で構成されている。テキストの内容は、戦中・戦後の新旧の価値観が入りまじるイギリスで、パイソンズはどのような光景の中で育ち、いかにして大学で出会って集合し、BBCという若いメディアにかかわり、パイソンというアイディアにたどり着いたかということ、最初から初めて、途中もやり続けて、そして文化的に炸裂する釘爆弾のようなコメディを作りあげたかということ、どのようにそれが終わったのかということ、そしてかれらにとってパイソンとして生きるということはどういうことかということが詳細に語られる。

しかし、かれらが「モンティ・パイソンズ・フライング・サーカス」や、それに続く4本の映画をどのように考えて、書いて組みあげ、そして実行したか、ということについてはそれぞれの視点から詳しく語られるが、その内容そのものについて改めて説明されることはほとんどない。つまり、「これを読む人間は全員それを知っている」という前提でこの本は編まれている。

そのように枝葉が潔く切り落とされているためデータ資料的価値は犠牲にされているものの、そのかわり本書は、データに足をとられがちな既存のパイソン本とは一線を画している。これは文化の目撃者の記録である。終戦後の英国社会に発生してきた「怒りをこめて振り返れ」な価値観の発達に合わせるようにして育ち、抜き身の白刃のような「パイソン」を引っさげて社会に切り込むことになった6人が、その文化の最先端で何をどう見て感じてきたかというな貴重な証言である。「モンティ・パイソン」以外のかれらのIDには、話の流れで必要なことを除き一切言及されない。また死んでいるグレアム・チャップマンの代理の人々を除き、パイソンズ以外の人間の発言もない。焦点が完全にモンティ・パイソンのみに合わせられてそこに深く踏みこんでいる。

その結果、現れてきたのはコメディと、そして「今は愛すべきコメディ集団ととらえられている」(エリック・アイドル)パイソンズの、そこまでさらす必要があるのかと思われるような、プライベートかつ非コメディな背景である。しかしこの本の著作者クレジットは (C) Python (Monty) Pictures なのであり、すなわちそういう部分をもひっくるめた上で、これはモンティ・パイソン公認の「自伝」本なのである。(グレアム・チャップマンの自伝に関しては、編者ボブ・マッケイブいわく、本人から「『あいにく死んでるもんでどうしても都合がつかない』という言い訳の連絡が来た」ので、代理人を立てざるを得なかったのだそうだ。)

The Pythons Autobiography by the Pythons の邦訳「モンティ・パイソン正伝」(白夜書房)は、基本的にペーパーバックのテキストと構成に沿っている。加えて独自の内容として、宮沢章夫氏の「世界の混沌はまだ続いている」と、須田泰成氏「意識の流れは究極の仮想ユートピアに宿る」と、高度かつシリアスなモンティ・パイソン論になっている解説が巻末に掲載されている。また、本文中に言及される地名を示すイギリスとアメリカの地図が含まれている。また、原書は英国を基準にして、説明が省略されている。例えば「デイヴィッド・フロスト」という名前を聞いただけで英国人ならすぐにその像を目の前に見るであろうが、日本ではそうはなりにくい。それをできるだけ補うために、やはり巻末に17ページの注釈がつけられている。

定価は3990円。安くはない。しかし、もし3990円とこの本とを選べと言われたら、個人的にわたしはこの本を取る。そしてコメディを見る新しい目を得て、残りの人生楽しく生きることを選ぶ。(どういう状況下でそんな選択を迫られ得るのか、という議論はともかく。)それに、パイソンの目線で世の中を見ることを覚えてブライト・サイドを歩いてていくこと、それはなかなか悪くない。

関連リンク:
宮沢章夫氏 遊園地再生事業団「Papers」
須田泰成氏 yasunarisuda.com / Yasunari Suda's Blog Comedy
「モンティ・パイソン」正伝@白夜書房ホームーページ
「モンティ・パイソン」正伝@アマゾン
The Pythons Autobiography by the Pythons @アマゾン 

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ところで、
eno7753さんが14OCT 「正伝おぼえがき」のコメントで教えてくださった、来週28日(金)川崎チッタの谷山浩子さんとケラさんのパイソン歌ライブ、楽しそうなのでちょっと見に行こうと思います。→ ★★★ 
管理人を見つけたら、「ブライアン」の最初んとこで、ジョンが石をボコボコぶつけられている要領で「正伝」を力強く投げつけてください。ほぼ1キロのカタマリは想像するだにはんぱじゃなく痛そうですが、わが身を挺して営業作業、どうぞひとり1冊お買い上げいただいた上でお願い申し上げます。なんなら2冊。いや3冊。

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Comments

先日お初のご挨拶をした中年です。
週末に楽天から『正伝』届きました。毎晩、寝酒代わりにちびりちびりと読んでます。寝床で1kgは重いです。仰向けになると、腕が痺れます。やっと第1章が終わりました。筋肉が少しついたようです。
谷山さんとケラさんのライブ、カバコフさんのHPで知って、私もチケット買いました。『猫森』しか知らない人間が行っても構わないのか・・・と悩んでます。当日、口ひげはやした怪しげな四十男がキョトキョトしていたら、たぶん私です。『正伝』持っていって、投げつけたらサインいただけますか? と、akkoさんのお顔も知らぬのに、失礼申し上げました。
Finlandで幕開けしてくれることを願いつつ。

Posted by: josan | 24 October 2005 at 16:43

『正伝』私も少しずつではありますが、読み進めております。ひじょ~に読みやすい日本語で、すばらしいです。(その前に読んでたのが「銀河ヒッチハイクガイド」の翻訳で、なんかちょっと脳みそがバラバラになるような読書でした。もちろん書かれている内容から来るところも多分にありますが…。)
で、もうダメだろうと思ってチケットサイトを覗いてみたら、なんとまだ取れるようだったので、今週末[谷山浩子/KERA]のチケットGetしました。
ああ、私も『猫森』とか『帽子屋さん』とか聴いてました…。>josan さん
昨日NHKのニュースで「QUEEN」の方々も成田に到着とのことですし、Terry Gilliamオヤジもおそらくまだ日本に居るのではないでしょうか。それにakkoさんもいらっさるとすれば、ここ数日は、すげ~密度の濃いぃ実りの秋ニッポンといえるのではないでしょうか…^^;)

Posted by: まいまい | 25 October 2005 at 04:23

★josanさま
原本ハードバックは寝転がって読むと気分はベンチプレスでしたが、正伝は鉄アレイだというもっぱらの噂です。もっとも、正しい鉄アレイは左右ひとつずつ計2個必要であることは申し上げるまでもございませんで、えーと。
28日には、川崎駅前あたりで「翻訳者にぶつけるのに手ごろな本だよー」というブライアンのエリックのような出店が出ることを期待します。というより、そういう店があって、よく見たらムシロしいて在庫を積んで売ってるのが実は翻訳者本人だったりするかもしれませんが、どうか生暖かくお見守りください。

★まいまいさま
かのギリアム先生、そして「それははたしてクイーンなのか」と世界中から突っ込まれているクイーンさんと同列に並べていただきありがとうございます。
そうなんですねテリGがいたんですね六本木あたりに。後追いでニュースを見て、ちくそうとくやしがりました。
それにしても、テリGは、もう押しも押されもせぬハリウッド大監督なのに、普通に映画ができた、というその段階だけで「うわあすばらしいよくやったテリG」と人に感動を与えてしまうので、考えてみればずいぶん得をしている監督さんです。でもそれは、ラ・マンチャでカメラ流されたりした末につかんだステイタスなので、なかなかこうなろうと思ってなれる地位ではないでしょう。「グリム」はUKでは12月公開なので、ひとつテリG先生の活躍をコトホギつつ、こっちで見て行こうと思います。
それはともかくとりあえず28日にはひとつよろしくお願い申し上げます。

Posted by: akko | 26 October 2005 at 15:19

akko様
『正伝』を購入してから数日、睡眠を削って腕を鍛えつつ熟読の毎日を送らせて頂いております。膨大な翻訳、誠にありがとうございました。
ここ1ヶ月ほど1日も休み無く、ぼろ雑巾というより原形を留めない、ホツれた糸の塊になるくらい会社に酷使されつづける私には、この本は元気の源というか、読まずにはいられないという依存症的な症状を生じさせる、危険な薬レベルに達しております。
ちなみに、そんなパイソン漬けを送っていたせいか、先日テリーGの映画に、極東のちっさい島国の片隅で、塵ほどではありますが僅かに関われることが決定致しました。
とりあえず「鼓童」Tシャツでも買って、仕事に精進してみます。

Posted by: ゆい | 28 October 2005 at 14:28

★ゆいさま
ありがとうございます。
正伝依存症というと、禁断症状はたとえば、何か重いものを求めて手が震えだし、二段組みで真っ黒けの頁におそわれる幻覚を見たりするのでしょうか。あるいは、天使のようにかわいらしい少年グレアムの姿に惑わされてそっちの方におぼれてしまうのでしょうか。
余談ですがわたくしは、先日友達と飲んで夜遅く帰ってきたら、突然パイソンが見たくてたまらなくなり、特にホリグレが見たくて死にそうになり、ところが帰省中ゆえ手持ちのものはなにもなく、しかしいてもたってもいられず深夜酔頭で自転車とばして近所のツタヤに走るも、そこにはホリグレはもちろんフライングサーカスも置いておらず、ただ一本だけ『ベスト・オブ・モンティ・パイソン』があるもそれは現在貸出中で、ちくしょうそれでもツタヤのはしくれか、新宿店の爪の垢でも煎じて飲めウリャー、それに誰だ断りもなく最後のパイソンを持ってった市川市民はあ!!ちくそう地の果てまで追いつめて見つけだし、ヲタ友達になってやる!!とじたばたするもどうしようもなく、なすすべもなくノドかきむしりつつとって返して、ほかに代替物もないので仕方なく、一晩中わなわなしながら手前の「正伝」を読んでいたことがあります。これはなんというかかなりはずかしい行為なので、他人には知られないように永遠にひみつにしておこうと思います。

それから、ギリアム監督とのお仕事とはひょっとして、「なんでもいいから日本語で罵倒する」というお仕事ですか?いえもっとすてきなお仕事であるはずです、なんでしょうなんでしょう興味津々。どうか続報をここにお願いします。そしてもし監督と御目文字される機会がおありでしたら、「みなさん牛の人生へようこそ!」で笑い死ぬとこだった婦女子がここにいるよ、とお伝えください。

(個人的見解ですが、少年グレアムは、冗談抜きで人の心をまどわすと思います。あの前ではダニエル・ラドクリフなんてどうでもいいです。この天から降りてきたような少年がああいう人生を送ることになる、と知っている目で見ると泣けてきます。)

Posted by: akko | 30 October 2005 at 03:11

akko嬢

お久しぶりです。地球の裏っ側の東寄りはいかがですか?
当方が東側へ行かないとあらば、うちのジジババが近々、西の果てにやってくることになりました。もちろん「正伝」をオミヤに頼みましたぜ。近くの本屋さん3軒を探したが見当たらなかったので、「お取り寄せ」にトライするそうです。

カタカナにめっぽう弱いオオボケババなので、果たして正しい正伝が届くのか、あらゆる意味でどきどきです。

取り急ぎ、売り上げ増加につながる(可能性)のご報告まで。。。

Posted by: オランダ人間山脈 | 06 November 2005 at 13:27

★在蘭同胞山脈さま
地球の裏っ側の東寄りは、①おいしかった(さんまとかつおが)、②おいしかった(くりごはんが)、③おいしかった(上野で食した焼肉が)、④、⑤がなくて⑥電車が時刻表どおりに来る、でした。
ご両親は無事正伝を入手され、それは山脈姉のお手元にわたりましたでしょうか。正伝心はオフクロゴコロ、売れれば命の泉がわきます。姉御もこれでいよいよ本格的にパイソンの方にいらっしゃいませ、こっちの水は甘いです。なんだったらDVD持って海を越えましょうぞわたくし。いや布教のためならわたしはこの身を犠牲にしたってよいと感じるのです(ただし常識の範囲内で。)

Posted by: akko | 14 November 2005 at 10:06

お嬢

あさってに正伝が(もしかして史上初めて低地国に)やってきます。あ、正伝が一人でJ○L便に搭乗するのはリスクが多すぎるので、うちのジジババが付き添いでくることになってるんです。

しかし、私はただいま勉学の身。活字変態の私としては、読みたい、没頭したいというのをほどほどにして、ジジババの相手もしながら、仕事もせねばならぬ身。大変辛うござります。でも、のろまな亀でも、私は負けない。

この忙しいというのに、Transavia航空の格安チケットで、2週間後にはジジババを連れてベニスに行きます。往復航空券が一人40ユーロ(当然のごとく航空税がその2,5倍)でだったので、3度目のベニス訪問です。今まで日本人女性と同行して1回、添乗もどきで1回行ったことがあるので、いつかはロマンチックなベニスの町を男前と一緒に散策したいという夢ははるかかなた、うちのジーちゃん+なぜジジババと一緒?とも思うのですが、これも天命とあきらめております。

取り急ぎ、ご報告まで。
大陸側では、夜間氷点下をきり始めました。
そっち側方面でも、ご自愛のほど。
かしこ

Posted by: オランダ人間山脈 | 23 November 2005 at 19:54

勉学とお仕事とご家族のお相手を一度にしながらさらに趣味に生きようとするその人生態度はまるで与謝野晶子のようだと思いました。学問にあこがれつつも、おそらく学問にあこがれたままで死んでいくのであろう身として、同胞のご活躍をひそかに海のこっちの山のあなたの空遠くから応援申し上げております。

それから正伝が着地した瞬間、海抜ゼロメートルなアムスの街がさらにずしっと沈下したりしなければよいのですが。もはやブラックホールなみの密度をほこるかの本は、そろそろ蘭姉のお手にわたりましたでしょうか。なお、そういうわけですので、ただでさえ沈んでいるベニスには正伝はなるべくお持ちにならないほうがよろしいかと思います。ずし。

Posted by: akko | 29 November 2005 at 11:21

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