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26 June 2005

26JUN : トニー賞国際実況の夜

以前確か某ライオンズマンションさんが、自社高級マンションは「電話でおフロがわかせる」ということを売りにしていたと記憶しています。すなわち、家に帰る前に自宅に電話をかけて、あるパスワードを入力すると、なんかうまいこと工夫された仕掛けが「ぴ」とか入って自動的に浴槽にお湯が張られて、帰宅と同時に温かいフロにありつけるよ、というものだったはずです。

わたしの市川の実家はもっとすごい。
なにしろ電話でビデオ録画ができるのだ。
いや、電話をかけて出た老母に「あと2時間後にNHKBSで始まるトニー賞録画しといて。じゃね」と頼むだけなんですが。
老母は「ボタンを押し間違えたらテレビが爆発するんじゃなかろうか」とテクノロジーを極度におそれる世代の人間ゆえ、ムスメに頼まれた後かなりのパニックに陥り、ニトロを輸送するイブ・モンタンよりも緊張を強いられつつ大汗をかいて走り回ったようです。

そんなことともつゆ知らず、先の6月18日日本時間の夜7時半すぎ、確認がてら「やほー老母よ、うまくやってるかーい」と気楽にふたたび国際電話を入れたムスメに対し、ハハは「あに言ってんのよいーかげんにしなさいよあんたってばまったくヒトの都合もなんにも考えずにわけのわかんないことを突然、でもねへへんよくお聞き、ちゃんとできてるもんね録画、最初はわけわかんなかったけどいろいろいじってたらできるようになったんだもんね、すごいでしょうアタシふふんふふん」とおっしゃる。「それは素晴らしい、なんたる孤軍奮闘のたまもの、だてに未亡人やってはいらっしゃらないですね」「お父さんもきっと喜んでくれるわねえ」「いや、父が生きてたらビデオ録画ひとつできんのかウリャー!とかさぞかし大暴れされていたと思いますが、それはともかくでは最後までよろしく」「ああ待ちなさいあんた、出たわよあれが」「あれって何が」「最初にいきなりぱいそんが出てきたわよぱいそん」「えっ」「まいけるとかじょんとかもいたわよ」「おおおお、ついに覚えたのですね母。なんたる感動だ。素晴らしい。ああ苦労が報われた、まったく腹を痛めた甲斐があったというものだ」「痛んだのはあんたのじゃなくてわたしの腹です」「初期には『あんたが最近好きなジョン・グリースさんって何よ、歌手?』とか言ってたのに。しかもマイケルまで識別できるとは。ああ感無量、まるで我が子の成長を見守っているかのようだ」「我が子はあたしじゃなくてあんたです」「ジョンとマイケルの他には?」「うーん、他にもなんかいたみたいだけど」「あ、その他は『なんか』扱いされてしまうのか。でも少なくともジョンとマイケルが出たってえことは、きっとスパマロットの初日の全員集合んとこの映像ですね」「すぱま?」「いや、じつはかくかくしかじかでパイソンのミュージカルがそのトニー賞にノミネートされているという…」「あっ。すぱまって言ってるよっ。すぱまろっとがえーと、衣装がどうのこうのって賞に入ってるよっ」「あ、それ、ノミネートされたけど落ちたんです」「あ、ほんとだ、落ちた」「いや、ノミネートは景気よく14部門にわたったんですがなかなか賞まではたどり着けなかったようで、男優さんもひとりくらいは取ってもよかったんじゃないかと思うんですが、まあ主演と助演とに2人ずつノミネートされたってのがかえって票割れを招いてしまったのかもしれないし、それにもともとホリグレという映画には『この人が主人公でこれが準主役だ』とすっきりと傍目にもわかりやすい区別がないんですよね、パイソンのみなさんはひとかたまりだから、アーサー王が主役と言えばそうなんでしょうがやはり今回もアーサー王とランスロットが同時に主演でノミネートされてるってことがやはりその区別のしにくさを示唆しているのでしょうし、でもまあ、そもそも21世紀のアメリカのショウビズ最前線でこんだけパイソンが売れるってえことがまず驚愕に値するのであって、しかし英国のサブカルチャーがアメリカのマーケットに受け入れられる際にはある種のフィルターがかかり本来の下から上のオーソリティブな権力に対するサブバーシブな表現という意図で作られたセンス・オブ・ヒューマーがただ単に英というクラス的に一段上の国の方から米の方へ下りてきたコメディということになりそのパンクな真意のほどがどこまで伝わるかは議論の余地があるものの米から英への伝達の際にも似たような現象が…」「ちょっとうるさいよあんた、聞こえないよ。あっ。今、またすぱまろっとが。すぱまろっとが女優さんの賞で」「女優さんなら、あ、それ、取ったやつです。サラ・ラミレズさんという面白い姐御です」「ほんとだサラさんだ。面白いってどう面白いの?」「いや実はそれはですね、」

と言いかけて気がついた。ハハには、こないだのニューヨーク旅行の目的は「休暇と観光とショッピングだよ」としか告げていないことに。いや、ある旅行の目的が「観光とショッピング」と言って世間様に通用するのならば、「わたくしはパイソンミュージカルを見にニューヨークに行くのです。そこんとこよろしく」と堂々と宣言しても何ら支障はないはずなのですが、そこはそれ、最後の一線というか、えーとほらそういうもんがあって、なんか理由は伏せておいた方がいいんじゃないかという気が非常にしたわけです。
だからわたしは、

「いや、面白いっていう噂を聞いたんだよあはははははは」

と古典的に笑ってごまかしました。ハハは「ふうん」と申しておりました。

すまぬハハ。このつぐないは必ず致します、肩叩き券とかで。って小学生かこのムスメは。ちなみにそのビデオは今ごろどこかの空の上をわがラットランドのアバラ家めざして飛んできているはずです。まだかなまだかなと、1日に5回ポストを除いて待ちかまえています。

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Comments

あっ、書き忘れましたが、先日大変遅ればせながらジョンが出演していた「Isn’t She Great」を拝見致しました。
驚きました!「スパマロット」に出演しているデヴィッド・ハイド・ピアース氏(お名前合っています?)も出演していたんですね。
私、全く知らない俳優さんだったのですが、個人的に今後注目していきたくなりました。何故だかトニー賞の授賞式の模様を観ても、自然と目で追っていたし。(笑)

>ニトロを輸送するイブ・モンタン
これって「恐怖の報酬」ですよね?私の父が面白いと言ってやまない映画なので、読んでいて思わず反応してしまいました。(私は未見なんですがね)

Posted by: ひとちゃん | 03 July 2005 at 16:07

始まった当初は誰も期待していなかった「チアース」の続編「フレイジャー」が、90年代を代表する名シットコムにまで成功した理由のひとつは、フレイジャーの弟ナイルズ、すなわちデイヴィッド・ハイド・ピアースさんの存在があったからではないかと、ちょっとひいき目を加味しつつ申し上げます。あのような、一見きちんとしてて固そうなのに実は壊れてバカができる、という感じにわたしは非常によわい。TVの大ヒット(フレイジャー)と舞台の大ヒット(スパマロット)を踏んだDHPさんが今後どうなるのか期待大。なるべく、妙にシリアスの方に走らず、ぜひ今の「固いけど壊れ」なキャラクターを守ってほしいものです。

Posted by: akko | 27 July 2005 at 11:55

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