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27 July 2004

27JUL "OUR, HERO!"

実はスパイダーマン1が個人的にどうも「なんだかなあ」だったので、2はどうしようか、まとりあえずトビー・マグワイアのかわいい顔でも見にいこか、くらいのつもりでふらりとでかけて行ったのです。そうしたら、もうなんだか無闇と面白くて、面白くて面白くて、じっとしておれずにじたばたしながら見てしまいました。激ツボです。特に、悪に走った悪役ダコの人のワルぶちきれっぷりがたいへん楽しゅうございました。いくら悪だからといって、真っ昼間の銀行で堂々と金庫の扉をひっぱぐなんて、なんというあられもないタコでしょうか。まったく「粋」とか「イナセ」とかいう言葉は悪ダコ辞書にはないのでしょうか。しかし、スパイディにボコボコに殴られても平気なのに、ババアに傘で「えいっ」とはたかれると「ぐああー」とサングラスまで砕けてダメージを受けるタコはなかなかすてきだと思いました。

えーとわたしはかの如く、トビー方面からスパイダーマンに流れてきた軟弱な婦女子なので、アメコミ史にお詳しい方のご示唆を頂ければと願うのですが。

パート1に輪をかけてだめ感を色濃く漂わせる21世紀のアメコミ映画ヒーロー、ピーター・パーカー君を見ていると、しみじみ「スーパーマンは遠くになりにけり」だと思いました。1970年代に銀幕に現れたクラーク・ケントは、宇宙人で最初から超人で、背は高いわガタイはごついわ白い歯はきらーん!だわ、非のうちどころのない優等生のような人だったのに。で、途中色々ありましたが最後には死んだロイスも生き返り、白い歯きらーん!と星条旗しょってホワイトハウスに飛んできて大統領に挨拶をして去っていき、子供心にも「おいおい時空をゆがめておいてそりゃいくらなんでもさわやかすぎやしないか」と思ったものです。デイリープラネット社ではダメ社員扱いされていたようですが、さりげなく銃弾の素手つかみ取りをしたりして実はダメではないことを観客に証明していたし(あと帽子を帽子かけにかけるのがうまい)、それにかれにとっては人間の方が仮の姿なので、ダメ扱いされてもわりと平気でいられるのではないでしょうか。パワーの面でも、例えばスパイディが電車を止めあぐねているのを見て、「うわー!クラーク・ケントを呼べやつなら片手でー!」と思った人はけっこういそうです。

話は少しそれますが、アメコミの中の人たちで、スーパーマンおよびスパイディがヒーローたるゆえんはわかるのです。なにしろ超人だし。ところがバットマンという人がいて、この人はただのプレーンなおっさんである。おまけに妙に暗い。暗いのに、執事つきのブルジョアだってんで、金にあかせてパワーを用い覆面姿で相手をやっつけるという構図もまたたいへん暗い。立て万国の労働者あ!君はアルフレッドなしで、通帳とかハンコがしまってある場所がわかるのか。洗濯掃除アイロンかけができるのか。人生金がすべてではない。いや少しは金だが。とわたくしはかれとサシで話をしてみたいです。その上、アメコミの中の人にはさらにハルクという緑色の人がいますが、この戦車をつかんでぶん投げたりしている人は一体ヒーローなのか何なのか、未熟なわたしにはどうしてもわかりません。

えー閑話休題。
ところでこういうマンガ的ヒーローは、そういえば英国にはいない。全然いない。何故だろうと考えるにその理由は、法律で高いビルが建てられないから、スパイダーマンが困る。からでは決してなく、どうもこの国の人々はそういう勧善懲悪ヒーローを生産するには現実の方にいそがしすぎるようです。あるいは、多すぎる歴史が勧善懲悪スーパーヒーローなんて所詮いないと思い知らせてくれているというか。それにこの国では、暴走する電車を止めようにも、そもそも電車が毎日平気で2時間遅れたりするので、ヒーローはひとり線路に手持ちぶさたにたたずむばかりでしょう。このへんは、先日の「米シットコムはきらきらセットに美男美女だけど、英国の方はきびしく現実にしたがいビンボウ描写は容赦なくビンボウである」という事実に共通する何かがありそうな気がします。

ともあれクラーク・ケントが、草の根にまじりつつ実は宇宙超人で地球人的制約から明るく免除されていて白い歯きらーん!でいられたのは、ひとえにスーパー赤子入りの宇宙船がひと昔前のアメリカのカンザスだかどこだかに着地したからだと思います。田舎住まいの若い頃はちょっと葛藤があったようですが、ヒーローは大人になってパワー全開!空飛んじゃうぞ!人々の賞賛!おはようございます大統領!という図は、どうにももうゲップが出るほどアメリカであって、華麗に枯れつつ没落しゆくたそがれ英国では、それはなんだか難しそうです。

とスパイダーマンを見て以来ずっとこんなことをネチネチ考えていたので、トコツカさんが先日お知らせ下さったキム・ハワード・ジョンソン氏とジョンとの共著 Superman: The Brit は、その問題を真芯でとらえて大ヒット、インパクトの瞬間思わずヘッドが回転しちゃいました。これは面白そうです。発売元の DC Comics のここんとこから4頁ぶんだけのぞき見することができますが、DC Comics とは確かもともとのスーパーマンの出版社ではなかったか。この4頁で、例えばビルから落ちかけているのがどうやらラトルズ連らしいとか、テレビの上にペンギンがあるとか、そういうパイソンレファレンスも楽しいのですが、それよりクラーク家両親の気弱な態度及びプレスの人のしょーもない質問が、実にじーつにーイギリスだなあと感じるのです。

強いて言えば、かのように純イギリス両親のもと育てられたはずのクラーク青年が何故米語を話しているのかとか素朴な疑問もなきにしもあらず。でもいいのです。発売は今年の暮くらいだそうで、なんだか最初の予定から遅れている気配もありますが、ゆるりと風待タバコをくゆらすことにして気長に構えつつ、わたくしは今、ここからさっそく予約にでかけて行くところです。


それにしても話は戻ってスパイダーマン2。
ハリーは博士を「オットー」と呼んでいますが。その「オットー!」を聞くたびに、わたしの脳裏には、いちいちジョン・"オットー"・クリーズ青年の超初期のネタ「わたしの名前はオットー!オットーとは、ドイツ語で、『8』と、いう、意味、でええーす!!」が鳴り響いていました。つまりオットー・オクタヴィウス博士は、もともと『タコ山八太郎』みたいなどうにもいけてない名前だったわけで、そんな名前だったらわたしだってグレて悪に走ります。


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24 July 2004

24JUL スパマロットは遠くにありて

先週デイリー・メイル紙をめくっていたら、SPAMALOTについての記事があり、そこでエリックがひとこと。

「SPAMALOTの展望? そうだなあ、この時期ブロードウェイにかかる他の殺人ウサギや足無し黒騎士が出るたぐいの芝居の中ではわりといけるんじゃないか」

"(Spamalot will be) as good as or quite likely better than any other show with killer rabbits and a legless knight opening on Broadway this season."

エリック流にケムに巻かれた感じでぱっと見では意味がよくわからず、「えーと」と何度も読み返してしまいました。仕掛け人エリックはこの芝居に一体期待しているのかいないのか。

デイリーリャマによると、シカゴのワールドプレミアは12月21日から05年1月16日、会場はシューバート・シアター、そしてニューヨーク本公演は05年2月7日から3月10日、会場は同名のシューバート・シアターです。おおマンハッタンのどまんなか。

チケットはここで買えますが、ともにまだ発売されていないようです。
シカゴ → ticketmaster
ニューヨーク → Telecharge


わたくしはつらつら考えた。
見たいけどねえ。アメリカかあ。さすがにアメリカは遠いので、ロンドンに来るまで待つことにしよう。と思いつつ、この芝居がアメリカを生きのびてロンドンまで来るという保証はどこにもないな。と思いあたり、でもこっちは一応パイソン本国なんだから来ないと立場ないじゃん。と希望的観測をしようと思うものの、しかし大ヒットした『ザ・プロデューサーズ』ですらブロードウェイからロンドンに来るまで2年くらいかかったぞ。という事実を思い出し、ちくしょーアメリカベースで仕事をしてる最近のジョンとエリックなんか大嫌い!一体どうしろと言うのだ、と悩むうちに、ふと「真の愛とは何かわかるか?犠牲だよ。犠牲。」というジョン・リスゴーの言葉をふと思い出したりして(@映画『クリフハンガー』)、そうか愛は犠牲か。やっぱ犠牲だよな。って違いますわたくしは犠牲になどならないなりたくもないしなる予定もない!とじたばた叫ぶもはっと気づくと右手が左手に知られないようにチケットマスターでチケットを10枚買おうとしてたりして、どうも当分心おだやかではいられなくなりそうで、やっぱりわたしはアメリカベースで仕事をしている最近のジョンとエリックなんて大嫌いです。でも好き。

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18 July 2004

18JUL 英米ドラマの出会うとこ

ここ10年間、金曜夜とは、すなわち「チャンネル4で9時から『フレンズ』10時から『フレイジャー』を見る夜」でした。

一応英シットコムをこよなく好む者としては、堅実に現実に即しリアリティぎりぎりのとこで勝負する英モノの潔さをもってよしとしたいわけです。しかし英モノには全体的に独特の地味さがあって、またときおり現実に即しすぎビンボウの描写まで匂い立つようにリアルで、なにしろ現実なので美男美女も慎重に遠ざけられていて、なんだかどうも、ピューリタニズムとはこの国でいまだ息づいているのだと妙に感心してしまうのです。

例えば先日BBCでベストシットコム1位になった Only Fools And Horses。舞台はロンドンのペッカムというどうしようもないほど荒んだ実在の地域で、両親を早くに亡くした労働者階級の兄弟がそこの公営高層安住宅に住まっていて、二人ともどうも女っ気がなくて、お金もなくていつもぴいぴいしていて、弟はこの底辺から抜け出すべく比較的堅実に生きようとしていて、兄はその弟を思うがためになんとかして手っ取り早くお金をもうけたくてヤバそうな仕事に手を出しては、そしてもっとヤバい事態に陥っては、罪のない弟をも巻きこんで大変なことになり、というパターンが多いのですが。こう書いていると、これがケン・ローチの映画ではなくコメディであるというのがほとんど信じられなくなってきます。ちなみに兄の方を演じているのは Do Not Adjust Your Set にも出ていたデイヴィッド・ジェイソンです。

OFAHは面白いのです。それはとても面白い。面白いんですがしかし、その直後に米モノ、特に「フレンズ」なんかを見ると。きらーん!じゃーん!全員美男美女ー!マンハッタンのど真ん中ー!「ハロー」じゃなくて「ヘイ!」と挨拶ー! いつも空いてるおされなカフェのソファー! もう画面の色からしてあまりにも鮮やかに違うので、涙が出そうになったものです。「フレイジャー」にしても、主人公は中年の兄弟ですがビンボウな空気は微塵も漂わせない、いつもかろやかな仕立てのよい服のお医者さんでした。かつて憧れられていたアメリカ文化というのは、このようにきらきらと輝いて目に映るものだったのだろうとしみじみ思います。

しかしフレンズもフレイジャーもたいへん長く続いたもんだから、やや「毎週末今そこにこんな面白いもんが2つもあって当たり前」な状態になっていました。だから先日いきなり両方いっぺんに終わってしまって、いささかうろたえています。孝行したいときにはフレンズもフレイジャーもなし、という諺どおりです。

で、ポストフレンズ & フレイジャーの金曜日夜9時台を今しょって立っているのは「ウィル & グレイス」です。(しかし、あきらめきれていないらしいチャンネル4さんは、8時30分からフレンズを再放送しています。)フレンズのきらーん!という派手なインパクトはないようですが、じわじわと金夜の人気米シットコムとして順調に浸透しつつあるようです。


と思っていたら、
「ウィル & グレイス」にジョンが出ててそれがエミー賞にノミネートされたよ、というニュースをおととい小耳に狭み、
思わず「ゑ?」とつぶやきました。
なんだなんだ聞いても見てもいないぞとつぶやきつつあわてて調べてみたら、どうやらUK未放映分の第6シーズンに何度か出ていて(現在UKでは第5シーズン)、それがコメディドラマゲスト出演カテゴリーでのノミネートとなったらしい。主人公群の誰かの母親である未亡人だかなんだかと結婚するとかしないとか、いやあまり先のストーリーを知りたくないのでナナメ調べしただけなのですが、そんなふうな役柄だそうです。

おお。確かこのコメディゲスト出演賞ノミニーには、去年ブラッド・ピットなんてのがいたぞ。今年は同じとこにジョンの名前が並ぶなんて、なんて景気のいい眺めだ。ふっふっふ。と思っていたら、今年のこの賞本命は、「フレンズ」に男ストリッパーとして出てきて大暴れしていた、ダニー・デビートなのですなあ。エミーさん、どういう基準なんだ。いや物凄く面白かったですがダニー・デビート@フレンズ。

ちなみに先日拙元ex日記にてちと言及したように、ジョンはすでに89年に一度「チアース」出演で同エミー賞を取っています。しかしこのときのキャラクターはちょっとフォルティ氏に寄りかかっている感じがするので、もう少し何かが欲しいと思わせられなくもありません。

かのようなツウの皆様には、2001年の米シットコム 3rd Rock From The Sun 第6シリーズに2回ほど現われるジョンをどうぞ。もう、文句のつけようのないほど、完全に、独創的です。というか単に「変」です。ジョンは、主役宇宙人ジョン・リスゴーのお友達宇宙人です。ジョンLの家のキッチンで、オーブンの中から料理を乗せた熱鉄板を「宇宙人だから平気」とか言いながら素手でつかんで取り出したりしてます。ジョンCの役名は「リーアム・ニーソン」ですが、これが何かの伏線なのかと思っていたら、何も起こらずそのまま終了します。3rd Rock はエミー賞受賞のとてもよいコメディですが、ジョンCのリーアム・ニーソンに関しては、なんだかわけがよくわかりません。

この手のものを見ながら、「うわーまたジョンがこのようにわけのわからないことをー」とごろごろ苦悶し、それが極限に達したところでふと裏返り、気がつくと光につつまれたような快楽の境地に立っている、ことができるのが真のジョン専ではないかと思いますが、どうもそこまでの道のりは長く曲がりくねっているようです。

ちなみにわたくし、もはや伝説となっている、2002年にわずか2回で打ち切りをくらった米ABCのシットコム Wednesday 9:30 (8:30 Central) のビデオを持ってたりします。これがどんなにすさまじい快楽の境地をもたらしてくれるのかと思うと冷汗が出るほど楽しみで、入手後2年経ちますがいまだ一度も見ておりません。考えるとまるで、「リング」の中の人のような気分になってくるのです。
 

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12 July 2004

12JUL 裏声で歌へ円卓騎士

エリックが音頭を取ってホリグレをミュージカルにしてブロードウェイにかけようとしている、というのはなんとなく聞き知っておりましたが、このたび一部配役が次のように決定したそうです。

アーサー王 … ティム・カリー(「ロッキー・ホラー・ショウ」の人)
ランスロット … ハンク・アザリア(「ザ・シンプソンズ」のモーの声の人)
ロビン … デイヴィッド・ハイド・ピアース(「フレイジャー」の弟ナイルズの人)

ついでに、

舞台監督 … マイク・ニコルズ(「卒業」「キャッチ22」「シルクウッド」「プライマリー・カラーズ」の人)


しかしこの名前群をにらんでみても、

・ティム・カリーはもうかなりトシなのではなかろうか。
・モーの声の人と言われると実はモーの顔しか思い浮かばない。ううんあの顔のランスロット。ううん。うなされる。
・わあっナイルズが。「フレイジャー」で主役フレイジャーより明らかに人気があったナイルズがこんなところに。フレイジャーを見ながら常々「なんか、イギリス人みたいなアメリカ人だ」と思っていたがやっぱり。それにしてもロビンが妙にいい役者さんなのはエリックが陰で糸を引いてるからか。後でジョンがオレにも選ばせろとか、「ランスロットはジョニー・デップにやらせろ」とか言ってきたらどうするのかエリック。

と、思いは千々に乱れるばかりで、何がどう起こる芝居なのかあいにくひとつも見当がつきません。

ちなみに、ティム・カリーは1946年生まれ、ハンク・アザリアはシンプソンズだけではなくいろんな映画にちょこちょこ出ていて、ヘレン・ハントの旦那さんの、こんな人→★★★でした。この人があの凶悪顔のモーをやっているのか。ほー。

この「映画ホーリー・グレイルの素敵な二番煎じ」であるというミュージカルSPAMALOT! は、今年暮からシカゴで上演、来年2月にはNYブロードウェイに来るのだそうです。

ううこれは見に行きたいと思いました。
しかしその一方、
「歌を歌うランスロット」というなんだか強烈に矛盾するキャラクターを目にした場合どう対処すべきか、と考え始めると、脳の回線がショートして耳からケムリが出てきます。このおそるべき「歌うランスロット問題」を解決するまで、わたしはおそろしくてアメリカには近寄ることすらできそうにありません。


ソース:BBC Comedy News & imdb.com news


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08 July 2004

08JUL 華麗なるたそがれの英国のパイソン

確か2年前の夏、インディペンデント紙で読んだことをひとつ。

ある日その固い新聞の記者さんが、ミズーリだかアイオワだかの、わりと裕福なアメリカの中部奥地域に取材にでかけました。
その取材上、記者さんは地元の学生たちと話をする機会がありました。
用件とは別に、ふと記者さんは興味をおぼえ、おそらくきちんとした教育を受けているらしき若いアメリカ人たちに向かい「ところで君達は、我々の国についてどういうことを知っているのか」と訊いてみました。
するとかれらは口々に、
「モンティ・パイソン」と言ったんだそうです。

記者さんいわく「パイソンなのか。こんなところにまで」。おそらくシェイクスピアとか、クリスマスキャロルとかシャーロック・ホームズとか、せめてビートルズくらいを期待していたのであろう記者さんの、「がっくり感」が切々と伝わってきました。

ところで。
アメリカ映画に、英人が、英人以外の役で出てくるのを見るのはなかなか面白い。例えば「ダイ・ハード」のアラン・リックマン。ドイツ人なのにばしばし英語です。非英語圏のキャラクターでもなるべく英語でつらぬきたい米映画にとって、英発音で話す英人は、英語だから言っていることはわかるし発音的には外国ヨーロッパ方面人である、という記号のような存在であるようです。そこで発生しがちな問題、たとえば「何故ソ連人がソ連人同士で英語を話しているのだ」という素朴な疑問を覚悟しつつ、それでもレッド・オクトーバーの艦長はショーン・コネリーでなければならなかったほど、ハリウッドの「英語でなきゃ、だめ!」事情はきびしいのだと思われます。また言いかえれば、つまり英人の俳優さんは、英人というだけではなく、アメリカから見たヨーロッパ的イメージ全般をもになっているということになります。

しかしアメリカから見た英国的イメージとはなんだろう。あの歴史的に若い国の人々は、かつてかれらを支配していた、歴史をどっさり背負ったまま華麗にたそがれ始めている国をどう見ているんだろうか。

と、そこでハリポ映画をなんとなく思い出します。初期の原作では、ホグワーツでの寄宿舎生活は、架空の魔法学校の話ではありますがいろいろなできごとや人々の言動の細部がかっちりと北イングランド的でした。しかし映画(特に1と2)の方は、出演者は全員英人であるものの画面がちょっとヨーロッパ無国籍っぽくて、もうボーディングスクールとかお城とかが楽しくて珍しくてしょーがない、というディズニーランドのような光景ばかりでした。

しかしあれはなんというか、えーと例えば、「ブレードランナー」でことさら道頓堀のグリコがばーんと出てくるというか、レイ・チャールズを歌う「ブラックレイン」の健さんというか、トム・クルーズが横浜港に降り立ったら正面に富士山がどかーんと見えるというか、「いや嘘ではない。いや嘘なのか。ううむもっと普通にやってくれ」な気分にさせてくれるものだったりします。

で、ここでシュレックの話。
1も2も、おとぎ話とかハッピリー・エバー・アフターとか、今までいつくしむべきものとされていたヨーロッパ起源の伝統を、アメリカ人が立ち上がりぎたぎたにやっつけてくれているので大変愉快です。こういう路線にこういうふうにジョンがひっぱり出されるのはもっと愉快です。ワンス・アポン・ナ・タイムなその王国が、いきなりど派手なハリウッドなのも大笑いです。(そういえば、ジェニファー・ソーンダースの妖精は、『プリティ・ウーマン』をシンデレラや白雪姫などのおとぎ話のひとつに数えていました。)こういうヤラレ方はしかし、欧ネイティブの人だったらあまり心おだやかではないものがあるのではないかと思いますが、わたしはあいにく米欧どちらにも属していないただの蝙蝠ジョン専なので、「もっとやれーイエイ」と気楽に面白がるばかりです。

しかしわたしは、ファー・ファー・アウェイ国の王様に三顧の礼で忠誠を誓う者ではありますが、それはそれとして今、猫にあたまを狂わされています。アントニオ・バンデラスのあの長靴猫です。あの面白いけどもどうも日本的視点のかわいさには欠けるという噂のシュレック陣のうち(含王様)、もうこの猫は猫ゴコロわしづかみです。うおお!この表情!このフカフカ感!!猫好きはもう全員うぎゃー! → ★★★


さてお話かわりまして。
最近ジム・キャリーとケイト・ウィンズレットの Eternal Sunshine of The Spotless Mind という摩訶不思議な映画を見ました。とても摩訶不思議だったので調べたところ、監督のミシェル・ゴンドリーは、カイリー・ミノーグとケミブラの名ビデオや、The Gap や Smirnoff の名CMを撮った人だということを知りました。ああなんか納得、と思ったらその名ビデオや名CMをまとめて見たくなったので、ミシェル・ゴンドリー全集的DVDを買いました。

そうしたら、

未見だったベックのDeadweight という曲の一場面に、強力にパイソンな引用がありました。よく晴れた明るい夏の波打ち際、突然オフィス机が置かれていて、そこにベックがきちんとスーツを着て座っている、という。あたしゃびっくりしました。

しかしびっくりし終わったあと、ゴンドリー監督の切り貼り的に無邪気な引用法を考えるに、これはもうファンとかなんとかの問題ではないようだと感じました。こういう強力なパイソン的イメージは、普遍的な古典としてすっかり普及しているのかもしれない。ここまで来れば、もう後は自動的に定着しつづけていくことでしょう。その結果、アメリカの奥地とか極東島国とかで、「英国とはモンティ・パイソンなのだ」という、英人が思わず「嘘じゃないけど普通にやってくれ」と懇願しそうなイメージがますます立派に受けつがれていくのだと思われます。


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